まずはじめに、誰かひとりが間違えて自分のではないスリッパを履いて行ってしまうのがきっかけのよう。そのあとに出てきた人が「うわ! スリッパがない!」「とはいえ、ここからスリッパを履いて移動しなければならない……」という状況に陥ります。そして「しかたがないから別のものを履いて行こう」となり、別の誰かのスリッパを履いて行き、その誰かもまた別のスリッパを履いて行き……。このようにして、別の誰かのスリッパを履いて行かなければならない連鎖が起こっているようです。
どうすればこの連鎖を回避できるのでしょうか? とある温泉施設を長年にわたり利用しているおっちゃんに聞いてみたところ、「同じ色・形をしているから間違えやすいわけやろ。それなら、当たり前を変えたらええねん!」とひと言。
おっちゃんいわく、「スリッパの置き方を工夫するねん」とのこと。「たとえば裏向きにひっくり返して置くとか、上下縦に並べて置くとか。そしたら明らかに違うように見えるやろ。これで間違えようがないで!」と力説してくれました。
なるほど、それはすばらしいアイデアです! おっちゃんの言う通りの置き方で再度調査してみたところ、見事履き間違いは起こりませんでした! ただし、その時「だけ」ちゃいます?
確か、おっちゃんは「当たり前を変えればいい」と言いました。ただし、それは一時しのぎに過ぎないのかもしれません。というのも、裏返しや縦に並べた置き方を見たみんなが「いいなあ」「間違えにくそう」と真似をしてしまうと、それが当たり前になってしまいます。その結果、同じような間違いの連鎖が起こってしまうのではないか、とおっちゃんに投げかけてみました。
「う〜ん、そうやなあ」とひと呼吸置いたのち、「まあ、これからも仲良く履き合ったらええんちゃうか? 知らんけど」と開き直ってしまいました。
(『バズろぅ!』ラジオパーソライター・わきたかし)