政府が新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けについて、5月8日から季節性インフルエンザと同等の「5類」に緩和する方針を決めている。ちょうど今年は国宝姫路城が日本で初めて世界遺産に登録されて30周年。姫路市内では記念事業として、2月から「さくらサーカス」公演が始まっており、5月には歌舞伎「平成中村座」公演、さらに7月からは国内最大の誘客企画、JRグループの「兵庫デスティネーションキャンペーン」も始まる。
ようやくコロナ禍の出口が見えてきたタイミングで始まる"ゴールデンイヤー"に大きく期待する地元観光業界。姫路でシティホテル「クレール日笠」を経営する原聡社長(54)もその一人だが、ただ喜んでばかりではない。姫路旅館ホテル生活衛生同業組合の組合長や姫路観光コンベンションビューローで理事を任される立場からも、「良いスタートを切るためにも先手を打った宣伝活動を」と関係機関に発破をかける。
観光まちづくりに強い思いを持つ原社長は、十数年前のJR姫路駅前再開発計画では「VIPに対応できる外資系高級ホテルの誘致を」と市に強く要望したこともある。それだけに、今年のG7サミット関係閣僚会議の誘致活動が選外に終わった理由の一つとして「スイートルームの絶対数不足」が挙げられたことに、「いまさら何を言ってるの?という思い」と一刀両断する。
姫路エリアの宿泊施設の客室数は飽和状態。客数が伸びないため、地元宿泊業界では値下げ競争が続いている。宿泊予約サイト大手の調査によると、コロナ禍以前に姫路の平均宿泊料金は全国ワースト3位にまで下がったという。「さすがにこの状況は誰のためにもならない。これからは稼働率ではなく、客室単価を重視すべきだ」と料金是正議論の先頭にも立つ。
インバウンドの回復にはまだ2年を要し、その間にも業界の淘汰は進むと言われる。原社長は「今から外資系ホテルを呼ぼうとしても難しい。物質的、金銭的な富裕層でなく、日本文化や城郭に興味のある精神的富裕層を呼び込むべきだ」と、観光地域づくりの司令塔「姫路DMO」の一員として、城下町姫路らしい観光振興策を訴える。
(取材・文=播磨時報社)