神戸の歴史的な建造物や伝統行事、地域の歴史資料などが認定される『神戸歴史遺産』に、新たに諏訪山公園(同市中央区)の金星台にある「金星観測記念碑」など5件が加わった。
「金星観測記念碑」のある金星台は、1874年12月9日、フランスの科学者によって太陽・金星・地球が一直線に並ぶ現象「金星の太陽面通過」の観測が行われた場所だ。この観測により、金星と地球、太陽と地球の正確な距離の計測ができるようになったことから、世界的にも大きな注目を浴びた。この観測の成功を記念して建てられたのが金星観測記念碑だ。
金星台の名称はこの観測を記念して名付けられ、広場から続くハイキングコースを歩いた先にあるビーナスブリッジやビーナステラスの由来にもなったと言われている。
金星台は、当時の開港後間もない神戸が国際的な天文観測の場所として選ばれたことや、観測が天文学上歴史的な快挙であったこと、そしてこの観測により日本にも最新の天文技術が伝わり、天文学の発展につながったことなどが評価され、昨年3月には横浜・長崎とともに『日本天文遺産』にも認定されている。
神戸市では、教科書に記載されているような弥生時代の銅鐸(どうたく)など、市内に存在する国宝や重要文化財のほかにも、地域に古くからある建造物や、地域の人々が伝えてきた歴史的な伝統行事、地域の歴史を記した記録文書などを保存することが重要と考え、管理者からの申請を受けて『神戸歴史遺産』を認定する制度を設けている。
今年1月31日に2回目の認定が行われ、金星観測記念碑のほかに、以下の4件も『神戸歴史遺産』に加わった。
◇旧住吉村吉田家関係資料:神戸市東灘区の住吉を代表する豪商吉田家に関係する資料群
◇神戸布引おんたき茶屋:布引雄滝を望む茶屋
◇関西ユダヤ教団・シナゴーグ:北野町にある日本に現存する最古のユダヤ教会堂
◇旧雲禅寺伝来品及び豊浦地区数珠繰り資料:江戸から明治にかけて存在した北区の雲禅寺や地域の歴史を伝える資料群
昨年行われた第1回では「六甲ケーブル六甲山上駅」「有馬芸妓文化」などが登録され、これまでにあわせて10件が認定されている。
また、ふるさと納税を通じた寄附募集による応援制度も設け、全国からの寄附により修理や継承事業の支援も行っている。これまでに、江戸時代に建てられた寺の修復や、北区の有馬文化を伝えるイベントの費用などに使われている。
「部活の練習や太極拳が行われるなど、地元の人たちにとっては生活の一部になっている金星台の歴史を改めて認識するきっかけになってほしい。次回の金星の太陽面通過は2117年になるので、次世代の人まで、金星観測記念碑の歴史的意義や価値を伝えていきたい」と話すのは、神戸諏訪山ふれあいのまちづくり協議会の横山直己さん。今後は金星台での天体観測やシンポジウムなどを企画し、PRも行いたいとのこと。
神戸市文化スポーツ局文化財課の中谷正さんは「神戸歴史遺産の認定により、文化財の保存と活用に繋がれば。神戸の大切な遺産は皆さんの周りにも存在するはずなので、ぜひ教えていただき、一緒に協力していければ」と話す。
※ラジオ関西『サンデー神戸』2023年3月5日放送回より