採血や検尿など、動物の健康診断は“人間ぽい” 受診ストレス軽減する「ハズバンダリートレーニング」とは? | ラジトピ ラジオ関西トピックス

採血や検尿など、動物の健康診断は“人間ぽい” 受診ストレス軽減する「ハズバンダリートレーニング」とは?

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 コアラをはじめ、たくさんの動物と出会える兵庫県南あわじ市の農業公園『淡路ファームパーク イングランドの丘』。園内には「生き物の“なぜ?”に飼育員が答えます!」と題した質問回収ポストを設置。来園した子どもたちが動物に関する素朴な疑問を飼育員に聞けるこのシステム、回答がわかりやすいと人気を博しています。そんな同園の飼育担当長・後藤さんが、ラジオ番組『Clip』(ラジオ関西、月-木午後2時30分~)に出演。リスナーから寄せられた質問に回答しました。

◆「人間は健康診断がありますが、動物にもあるんですか?」(ラジオネーム:ハイボールさん)

【後藤さん】私たちと同じように園の動物たちにも健康診断はあります。触診、検温、聴診、レントゲン検査、エコー検査、血液検査、検便、検尿など人間が受けるような検査を行っています。ほかにも定期的な体重測定、爪切り、げっ歯類やウサギの仲間には歯のカット・ブラッシングなど健康管理を目的とした動物との接触の機会は頻繁にあります。

コアラの採血の様子(写真提供:淡路ファームパーク イングランドの丘)
動物も人間と同じような健康診断を受ける(写真提供:淡路ファームパーク イングランドの丘)

――動物たちは検査を嫌がったりしないのですか?

【後藤さん】当園には大型動物が少なく危険な肉食獣もいないので、大抵の場合は「物理的保定」という技術で体を固定して検診を行うことが多いです。しかし動物の種類によっては神経質で検診はおろか、物理的保定が困難な動物たちもいます。そういった動物には「科学的保定」といって麻酔をかけて検診を行うことが一般的でした。ですが、動物種によってはリスクが高いものもいるため、できることなら行いたくないと思っています。

 そこで近年、多くの動物園や水族館で積極的に取り入れている「ハズバンダリートレーニング(受診動作訓練)」を当園でも行うことがあります。このトレーニングは“受診するために必要な行動”を動物から進んでとるように訓練し、身体的・精神的な動物たちのへ負担を減らすことを目的としています。

 好物の食べ物をご褒美にすることで受診に必要な行動をとれるようトレーニングしていくのですが、あくまで動物の方から“自発的に行動を起こす”ことがポイントとなります。行動の最中や行動直後に “いいこと”があると、その行動は強化されますし、動物が楽しんでいる間は長続きしますからね。そのため、動物の気分が乗らない時には行わないようにします。

カピバラがハズバンダリートレーニングを受ける様子(写真提供:淡路ファームパーク イングランドの丘)

 そもそも動物の多くは人に触られることを好みません。また、種類や個体によって触れられたくない体の部位も様々。ハズバンダリートレーニングで受診ができるポーズがとれるようになっても、触られる刺激によって台無しになってしまうこともあります。ですので「脱感作」という、動物たちが受診の際に感じる刺激に慣らすトレーニングも平行して行います。受診時のストレスを軽減し、検査を受けやすくするためです。

 これらのトレーニングは根気がいります。せっかくできるようになったことがゼロになってしまわないよう担当者間で技術の共有・継承など、トレーニング以外の部分の課題も多いです。動物園の裏側では、動物たちが日々少しでも幸せに暮らしていけるように地道な努力がなされているのです。

☆☆☆☆

※ラジオ関西『Clip月曜日』「どうぶつ通信」2023年3月20日放送回より

ニシキヘビのレントゲン写真(写真提供:淡路ファームパーク イングランドの丘)

◆「淡路ファームパーク イングランドの丘」
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