今年で創業54年を迎えた『飯田鉄工株式会社』(神戸市長田区)は、精密機械加工や大型船舶関連部品の製造を行う。培ってきたノウハウをいかしつつ、新しい取り組みにも力を入れている。代表取締役・飯田新吾さんに話を聞いた。
同社は飯田さんの父が創業、新吾さんは2代目にあたる。会社は当初、神戸市中央区・新神戸にあったが長田区に移転した。その直後に阪神淡路大震災が発生したが、幸運にも建屋は特に影響を受けることはなく操業を続けられた。
メインで手がけるのは“船のハッチ修理”。数日で修理を依頼されることも。「港がある神戸ならではの仕事」と飯田さんは言う。心がけていることを聞くと「顧客からの無理難題に嫌な顔をしないこと」と回答が。
「考え抜いた上で無理と判断したなら仕方ないですが、“無理”と即答するのは失礼にあたります。なによりモノづくりへのチャレンジ精神がない」(飯田さん)
物理的に不可能な場合は断るが、受けるための方法は限界まで探すのだそう。そしてこれは普段から社員にも伝え続けていることだという。
“職人気質”という言葉があるように、職人に対して我々は頑固なイメージを持ちがちだ。しかし飯田さんからは真逆の柔らかい印象を受ける。そのことを伝えると「昔は職人気質があったかも。ですが、今の時代に合わせ職人感を出さないように意識していたことはあり、徐々にソフトになっていったのかもしれません」と笑っていた。
そんな飯田さんは前社長である父親の背中を見て育った。
「父親は現在会長職に就いており、現場に出る必要は無いんですよ。それでも週に3度ほど会社に顔を出していますね。家でじっとしているより体を動かす、体が動く限りは仕事にたずさわる……という姿は見習うところです」(飯田さん)
この“仕事に対する姿勢”は飯田さんの息子にも受け継がれている。オンライン商談など、飯田さん自身は着手してこなかった新たな取り組みに励んでいるそうで、Twitter運営もその中のひとつだ。
『飯田鉄工株式会社』のユーザーネームを「IT」=「イイテツ」とし、加工の様子を動画配信。1本の軸の中心点が異なるように切削をする「偏心加工」の様子をアップした動画の中には、68万回再生を記録したものもある。「多くの人に見てもらうことができ『どうやってるの?』とか『不思議!』という声が多かった」と飯田さん。同社では昔から手がけている加工ではあるが、かなり緻密な技術が必要となる。遠心力がかかるため回転をあげすぎると加工している物がはじき飛んでいってしまうことも。船の仕事は納期が短く、なるべく自社で作業を済ませたいということで編み出した技だそうで、積み重ねてきたノウハウがいきている。
【68万回再生を記録した動画こちら】
こんにちは!イイテツです❗️
神戸市はまだ寒さもましで
過ごしやすい気温です!☀️
本日も残りわずかですが事故怪我のないようにお安全に‼️⚠️閲覧注意⚠️
本日も気分悪くしてしまい誠に申し訳ございません🙇♂️ pic.twitter.com/lNNkJqfjUC— 飯田鉄工株式会社 (@iitetu_iidatk) January 16, 2023