世の中には真偽不明な雑学が溢れています。先日、筆者が驚いたのは「人は一生の内に寝ているあいだにクモを10匹以上食べている」という説。口にクモが入り込み知らぬうちに食べてしまっている……という、気味が悪くもはや“都市伝説的”な雑学のように思うのですが本当なのでしょうか?
「嘘であってくれ!」と願いながら、クモの行動など研究するクモ博士・京都女子大学の中田兼介教授に話を聞きました。
そもそも、就寝中にクモが口の中に入り込む可能性はあるのでしょうか。これついて、中田兼介教授は「間違いに近い」としています。
「絶対に違うと言い切れないのは、人が口を開けて歩いていれば羽虫が入ってしまうこともあるように、クモも同様、たまたま入ってきたものを飲み込む可能性はゼロではないからです。逆に言うと、それくらいわずかな可能性しか無いということ。それに、人間の口内にみずから入るような習性はクモにはありません」(中田教授)
さらに中田教授は「たとえ寝ているあいだといってもクモが口に入れば普通は気づくはずですよね」と言い切ります。この言葉にホッとした一方で、なぜこのような雑学が存在するのでしょうか?
中田教授はこのように推測します。
【1】クモが人間にとって身近な生物であることから、そのような想像をしやすいのではないか
【2】クモが恐れられやすい存在であることから、人を刺激する嘘として生まれた雑学ではないか
「人がクモを恐れる気持ちは先天的な部分があるようで、生後半年の赤ん坊でもクモの絵を見せられると『瞳孔が開きストレス反応を示す』という調査結果もあります。クモを恐れるが故に生まれた“フェイク雑学”かもしれないですね」(中田教授)
中田教授はクモに関する“本当の雑学”も教えてくれました。
「アメリカで行われた調査では、家屋の中にいる節足動物の中でいちばん種類が多いのがハエや蚊の仲間。そして二番手として続くのがクモなのだそう。クモは狩りをするために毒を持つものもいますが、人間に効く毒を有する種類は稀です。ハエや蚊のように病気を媒介することもありません。むしろ人知れずゴキブリやダニを食べてくれる種類もいます」(中田教授)