展示されている作品のうち、岡本学芸員が「個人的に見てほしいのはチベット」だという。映像作家だった父が中国へ行った際、撮影隊からはぐれ、たどり着いたチベットでの出来事や思い出が描かれている。一色に見えても、色の濃淡で、細かくチベットの伝説や神秘的で不思議な世界を表現している。
父のチベットでの体験は、当時のチェコでは公に話すことができず、父は「家の中」で家族だけに話していた。つまり、外の世界を教えてくれる存在だった。岡本学芸員は「シスにとって父親は、不自由な中で小さな自由を与えてくれた大きな存在」で、「重要な作品」と分析する。「日本語訳が出ていないのが残念。でも絵を見るだけでもその世界に引き込まれる」と話す。
「もともとこの展覧会は、コロナ前、市立伊丹ミュージアムのリニューアル前に予定していた。時が経ち、ウクライナ情勢など新たな問題もでてきた。こういう時代だからこそ自由を追いかけることが必要になってきた。今なお現役のシスは、絵本を通してそのことを伝えようとしている」と岡本学芸員は言う。
「ピーター・シスの闇と夢」
市立伊丹ミュージアム(伊丹市宮ノ前2-5-20)
2023年4月14日(土)~6月11日(日)
休館日 月曜日 (ただし祝日の場合は開館、翌平日は休館)
https://itami-im.jp/