広島県三原市に生まれ、西宮を拠点に制作活動を行った洋画家・秦森康屯の生誕100年を記念した展覧会「生誕100年 秦森康屯展 館蔵品の作家とともに巡るその時代」が、西宮市大谷記念美術館で開催されている。2023年5月21日(日)まで。
秦森康屯(はたもり・こうとん)は、1950年代から本格的に制作活動を始めた。60年代以降は美術団体などに属さず孤高を貫いたが、時代の影響を敏感に受けながら、次第に自分のスタイルを確立していった。会場では秦森の活動を10年ごとに分けて展示しており、その変化を見て取ることができる。
秦森の作品は、近くで見ると何が描かれているのかはっきりしないものがある。しかし、少し距離を取って離れたところから見ると、その全景が浮かび上がってくる。1956年制作の「人々」や1960年制作の「日本海」などは、見る人の立ち位置によって見えるものが変わってくる。
1966年制作の「足摺岬」は、岩に荒波がぶつかって高くしぶきが上がる様が力強く表現されている。特に波しぶきの部分は白い絵の具が盛られていて、波がこちらに迫ってくるようだ。同美術館の内村周学芸員は「風景や人物を描いたものはたっぷりと絵の具が盛られているが、動物は軽い感じで描かれているように見える」と話す。
また、秦森と交流のあった荒木高子による陶芸作品や、山口牧生による石の彫刻の他、同じ時代に活躍した西宮ゆかりの作家の作品も併せて展示する。他の作家の作品とともに展示することで、秦森、それぞれの作家の特長が浮かび上がってくる。
秦森は1962年に西宮・甲陽園に移り住み、1994年に亡くなるまで暮らした。西宮の風景を描いた水彩画も残している。どの団体にも所属していなかったので、西宮でも「知る人ぞ知る」存在だった。同館での「秦森康屯展」は20年ぶりの開催となる。内村学芸員は「秦森康屯って誰?というイメージがあるかもしれないが、一度作品を見たら忘れられない。絵の具の使い方や存在感を、実際に作品をみて感じてほしい」という。
「生誕100年 秦森康屯展 館蔵品の作家とともに巡るその時代」
西宮市文教住宅都市宣言60周年記念
2023年4月1日(土)~5月21日(日)
西宮市大谷記念美術館
休館日 水曜日 ただし5月3日(水・祝)は開館
西宮市大谷記念美術館