新卒採用状況と学生の意識に変化 「採用したくてもできなかった」産業廃棄物処理業界に明るいきざし | ラジトピ ラジオ関西トピックス

新卒採用状況と学生の意識に変化 「採用したくてもできなかった」産業廃棄物処理業界に明るいきざし

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『SDGs』というワードを目にする機会も増えてきた昨今において、それを支える重要な業界が数々ある。「産業廃棄物処理業界」もそのひとつだ。

 兵庫県尼崎市にある『浜田化学株式会社』では「廃食用油」の回収と再生処理をおもに行う。廃食用油とは、コンビニやスーパー・飲食店で揚げ物に使用されたのち棄てられる油のこと。再生処理を施すことで軽油の代替燃料や、家畜の餌の原料・ハンドソープの原料としてリサイクル可能な資源となる。

廃食用油の再生処理を行う『浜田化学株式会社』

 さて、多くの学生が新たなる第一歩を踏み出し、新社会人としてのスタートを切ってはやひと月が過ぎた。これからの未来を担う若い世代の活躍が楽しみである一方、産業廃棄物処理業界の現状はどうなっているのだろうか。また就職先を検討する際、若者達は同業界をどのように捉えているのだろうか。副社長・岡野輝平さんに詳しく話を聞いた。

 今年、同社は7名の新入社員を迎えたが、そもそも産業廃棄物処理業界は新卒採用に積極的ではない時代があったという。「“新卒採用をしなかった”というより“新卒採用ができなかった”と言う方が正しいですね。産業廃棄物処理業界は“静脈産業”と呼ばれ、他業界に比べ職種や仕事内容をイメージしづらく、そのため良い印象を持たれにくいというのが正直なところ。かつてこの業界では、募集をかけるが『若者が振り向いてくれない』とか『教育体系が整えられていない』など、さまざまな要因で新卒採用には力を入れにくかったのです」と岡野さんは語る。

●結果がなかなか見えにくい業界
●業界を知るための接点が少ない

 こういった事も原因として考えられ、確固たる表舞台や華やかさがある業界との違いでもある。「産業廃棄物処理業界全体の向上をはかるには、まずは会社を変える必要があると思い、新卒採用に対して本腰を入れる方向に舵を切りました」と岡野さん。

 取り組みのきっかけは8年前にさかのぼる。同社の代表取締役と人事コンサルティングが接点を持った事が始まりだ。

「我々の業界は長年従事している者たちの意識改革も滞りがちである点に着目しました。この課題を解決するためには、やはり新しい風が必要であるというひとつの結論にたどり着いた。毎年きちんとした形で新卒採用する事で若い世代の力をプラスすることができ、社内はもちろん業界や社会の改革までも推し進めていけるのではと考えました」(岡野さん)

 副社長というポジション以外に人事も兼任している岡野さん。説明会や面接で学生と接する機会が多い中で、どんな学生と出会うのかを聞いてみた。

「一緒に働きたいとか、卒論のテーマが環境問題だった方が多いですね。学業以外の課外活動で社会貢献活動を行っていた方もいらっしゃる。事業内容そのものに興味があるという声を聞くことも。弊社の場合、事業の軸は『廃食用油のリサイクル』ですが、それ以外の事業の多角化に目を向ける学生も出てきています。環境負荷を低減するための貢献として何ができるかを考えている学生も増えていますね。いずれの方も近年の気候変動や温暖化をはじめとする環境問題、そしてSDGsという社会課題を強く意識している印象です。産業廃棄物処理業界が変革を迎えつつある中で、若い世代にも少しずつ変化が起こっていると感じます」(岡野さん)

 岡野さんに、これからの若い世代に求めるものは何かと質問した。

「弊社に関しては、今後の事業拡大はもちろんのこと、海外展開も視野に入れています。海外では廃食用油はリサイクルされることなく、環境汚染の一因になっています。世界を見据えた貢献活動をしたいと考えている。この方向性に理解を示し、気持ちをひとつにしてくれる柔軟性と意志の強さです」。続けて「業界全体をメジャーなステージに押し上げるべく働きかけていきたい」とも。

 岡野さんは最後に「2025年に向け、どれだけ社会が進むのか、どれだけ先を見据えることができ未来をクリエイトできるのか……その上で成し遂げたいことを明確にし、自身の存在意義・やりがいを見つけて欲しい」と、世の新入社員すべてに向けてエールを送った。

※ラジオ関西「正木明の地球にいいこと」2023年4月3日放送回より

『浜田化学株式会社』(尼崎市)
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