14日に行われたサッカーの女子プロリーグ「2022-23 Yogibo WEリーグ」第18節で、首位・三菱重工浦和レッズレディースとの上位直接対決に惜敗した、2位のINAC神戸レオネッサ。4試合を残して勝点差が7に広がったことで連覇への道が厳しくなり、試合後には悔し涙を流す選手も見られた。だがしかし、チームは「何も終わっていない」(キャプテン・三宅史織選手)「最後までしっかり戦い切りたい」(朴康造監督)と、リーグ戦をあきらめず戦い抜くことを誓っていた。
試合前の段階で勝点差は4。INAC神戸としては、とにかく勝つしかない状況だった。しかし、試合では「前半は浦和さんにすごく押し込まれる形が続いてしまって、先制点も奪われた」(INAC神戸・朴監督)。それでも、後半開始から元なでしこジャパン(日本女子代表)FW高瀬愛実選手(※「高」=はしごだか)を投入すると、フィジカルの強さを特長するベテランストライカーを軸に反撃。56分(後半11分)には、その高瀬選手が前線でのボールカットをきっかけに、最後はエースのなでしこジャパンFW田中美南選手が左足でシュートを叩き込み、試合を振り出しに戻した。
「失点してしまってからも、少しずつ自分たちのペースにもっていって、いい時間帯に同点に追い付けたが、負傷者が出たタイミングで、ちょっと流れが変わった」と高瀬選手も振り返るとおり、左センターバックの竹重杏歌理選手が負傷するアクシデントの際、それまでのホームチームの勢いが一瞬、止まってしまう。すると竹重選手の交代から2分後の76分(後半31分)、INAC神戸は左サイドを破られ、最後は浦和LのエースFW菅澤優衣香選手にゴールを献上。結局、そのまま試合は1-2で終了し、ホーム・ノエビアスタジアム神戸では、WEリーグの2シーズンでは初めて、なでしこリーグ時代を含めれば2020年8月23日の浦和L戦以来となる黒星を喫した。
試合後、田中選手は、「浦和は完成度が高いチーム。試合運びのところでも向こうのほうが上手だなと感じた」と振り返りつつ、「チャンスの量なら、同じくらいかこっちのほうがあったように思うが、そこを決め切るかどうかで、結局こういう結果を招いてしまったと思う」と、攻撃陣の一角として勝ち越し点を奪えなかったことを悔やんだ。「今日は大一番で、負けという結果がどういうことかみんなわかっていると思うし、特に悔しかった」と、試合後にはピッチ上に倒れ込み、悔しさをあらわにする様子も見られた背番号9。それでも、「浦和がまだどうなるかわからないところで、自分たちが負けても向こうには何のプレッシャーにならないのも事実。もちろん応援してくれるサポーターもいるし、勝ちを目指さないとプロとしてはダメ」と前を向いた。
また、朴監督も「最後まであきらめずに戦い切ることがプロとして大事。見に来てくれるサポーターもおられる。選手たちが最後まで(全力を)出し切れるように僕はアプローチしていきたい」と立て直しを誓えば、ディフェンスリーダーの三宅選手は「何も終わってない。自分たちがリーグを盛り上げたい思いは変わらない」と述べ、高瀬選手も「(優勝の)可能性を信じて、次に向けて準備をしたい」と気持ちを切り替えていた。
この試合を観戦していた元なでしこジャパンDFで、ラジオ番組『カンピオーネ!レオネッサ!!』(ラジオ関西)パーソナリティーの川上直子氏は、「前半はけっこう浦和がよかったし、当たりも激しく、選手の足も動いていて、特に猶本光選手がよかったと思う。トータルでみるとINAC神戸も私はよかったと思うが、課題は失点シーンだけだった」と、好勝負となった一戦を評価。「(INAC神戸にとって)現実は厳しいが、昨年女王のプライドにかけて、残り4戦はしっかり勝ちで終わってほしい」と、ディフェンディングチャンピオンのリバウンドメンタリティーに期待を寄せた。さらに、「得点王争いも見どころ」と、INAC神戸FW田中選手(10得点)や、浦和LのFW菅澤選手(9得点)、14日の試合で5ゴールを記録した日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)FW植木理子選手(12得点)で競い合う各チームのエースFW対決にも注目していた。
INAC神戸は次回の第19節、5月21日(日)にアウェイの熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で、ちふれASエルフェン埼玉と対戦。翌第20節は今シーズンのホーム最終戦となり、5月28日(日)にノエスタで3位東京NBとの上位対決に臨む。