演劇と観光が学べる四年制公立大学「芸術文化観光専門職大学(CAT)」(兵庫・豊岡市)の学長も務める劇作家・演出家の平田オリザさん。自身がパーソナリティを務めるラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、今春同大学に入学した学生が出演。入学の経緯や将来についていきいきと語った。
野中奏吾さんは奈良県出身。中学・高校時代はバスケットボールに熱中、演劇とは無縁だった。高校1年生のときに見たニュースで演劇と観光が学べる四年制大学「芸術文化観光専門職大学(CAT)」が兵庫県豊岡市に開学することを知り、国際関係を専攻していた野中さんは興味を持った。
しかし、新設校ということもあり情報が少ない。進路指導教諭にオープンキャンパスを勧められたため参加したところ、案内してくれた先輩学生らと意気投合。「当初は3コマ参加予定だったのですが、学生相談で話がはずんでしまって結局最後のコマは行けませんでした」と笑顔で振り返った。
実際に入学してみると、敷居が高く感じられた「演劇」や「ダンス」の授業も自身の視点をひろげるきっかけになり、集まっている学生らも個性的なので毎日が楽しいという。「みんなの個性が強すぎて、自分が埋もれている気がしてならないです」と吐露する場面もあった。
高校時代には生徒自身が地域と連携しながら問題解決を試みる授業で、奈良県に訪れるイスラム教徒観光客に向けた観光マップ『ハラルマップ』を作成した野中さん。駅や観光案内所などにマップを設置し、ハラル食が食べられるお店や食材店を紹介した。
調査するなかで、配慮や対応できる環境がまだまだ整っていないことを痛感したという野中さんに対し、平田さんは「大阪大学の学食では、ずいぶん前からハラル食メニューを設けていました。豚肉に触れてはいけないから、包丁も調理する人も分けなくてはいけないので確かに大変なんですよ。でも食べてみるとおいしいから、宗教に関係なくみんな食べるようになるんですよね」とコメント。
さらに、「大変そうに見えるけど、やってみたら案外うまく回りだすんです。今、マレーシアの観光客も増えていますし、今後は人口の多いインドネシアの観光客も増えてくると予想されます。城崎でも礼拝所を設けるなどの対応が求められてくるのでは」と自身の経験を踏まえ、多様性時代の観光を示唆した。
今後の抱負について、野中さんはこのように語った。
「『将来はこんな職業に就きたい』というのはないのですが、地域のお困りごとを聞きながら、ひとつの“歯車”になるような仕事がしたいです。気づいていない魅力を伝えることでどんどん輪っかをつなげていきたい」(野中さん)
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2023年5月18日放送回より
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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。