枕を北の方角に向け眠ることは「北枕」と呼ばれ、縁起が悪いこととされています。世の中には数多くの迷信があり、この「北枕」も何となく悪いことだと認識しているものの一つではありますが、ではなぜ北枕は縁起が悪いとされているのか、運勢的に実際はどうなのか、などを葬儀の風習の専門家や風水に詳しい専門家にそれぞれ聞きました。
まず、なぜ北枕は縁起が悪いとされているのか。その理由について知っている人も多いとは思いますが、葬儀において死者を安置する際に頭を北へ向ける、という風習からきています。
葬儀の風習について詳しい吉川美津子(きっかわみつこ)さんによると、「お釈迦様が亡くなった時に頭を北に向けていたことから、死者を北向きに寝かせることで早くお釈迦様の元へ行けるようにと北枕に寝かせるのです」とその由来を話します。一方で、「死者と同じ方角を向いて眠ることから、多くの人が北枕に悪いイメージを持っていることは確かです。ただそれが“縁起が悪い”のかどうかはまた別の話ですよね」と吉川さんは言います。ちなみに吉川さん自身が北枕で寝ることを気にするか、と聞いたところ「全く気にしませんね」と答えています。
“縁起が悪い”とは「凶兆」であるということ、つまり不吉な前兆やよくないことが起こる前触れであることを指します。では、北枕で寝ることは風水で見るとどうなのでしょうか。人気占い師の脇田尚輝さんによると「北の方向には大きな磁力があり、世界のあらゆる金属を引き寄せることから、北の方向にはお金を引き寄せるパワーがあるとされています。つまりは金運アップに繋がると言われている方角です。その結果、おのずと心に余裕ができて、恋愛運もアップする方位でもあります。北の方角は家族や人との繋がりにも影響があり、『北枕は子宝に恵まれる』とも言われていますね」と、北枕で寝ることは運勢的には良いことばかりだとしています。
また、北枕の風習についても、「北枕にしてお釈迦様と同じ姿で眠ることは縁起が良い、としている国もあり、インドでは『北に理想郷、南に死の国がある』と伝えられ、北に頭を向けて寝る習慣が残っていて、特にヨーロッパでは北向きに寝る方も多いようです」と、北枕に対する他国との捉え方の違いについても教えてくれました。
では、風水的に寝るには良くない方角はあるのでしょうか? 脇田さんいわく「おすすめできないのは北東枕と南枕です。南枕は気の流れを受けやすい北に足を向ける形です。よい気を取り入れられないためイライラしやすくなったり、金運が下がったりと運気に悪影響を及ぼす場合もあります。その一方で、人気運が向上する可能性も秘めているため、才能を開花させたい人や悪縁を断ち切りたい人にとってはよい方角といえるでしょう」とのこと。
北東をおすすめしない理由を聞いたところ、
「北東は『鬼門』として有名ですが、北東枕はパワーが強く気をつけた方が良いと言えます。ですが、北東は寝室がある場所としては悪くない方位とも言われているので、北東という方位が全て悪いというわけではないです。風水では最もパワーが強い方位で、古くから恐れられていた方位でもありますが、悪いことが起こるというわけではなく、とにかくパワーが強いので良い意味でも悪い意味でも扱うのが難しいからかもしれません」(脇田さん)