ターは若手女性指揮者に教育と公演のチャンスを与える財団を設立し、ジュリアード音楽院では学生たちに指揮を教えています。音楽院の講義でターは男子学生からの質問をきっかけに威圧的な態度をとり、これをパワハラとして何者かがSNSで告発します。
こうした中、ショッキングな報せが届きます。財団のプログラムでターが指導した若手女性指揮者クリスタが自殺しました。ターは当初クリスタの才能を買っていたのですが、やがてトラブルになった経緯がありました。ターはクリスタとのメールを削除します……。
監督と脚本を手がけたのは、『イン・ザ・ベッドルーム』『リトル・チルドレン』のトッド・フィールド。16年ぶりとなる監督作です。
絶対的な権力を振りかざす天才指揮者リディア・ターを演じるのはケイト・ブランシェット。観客は誰でも彼女の演技に圧倒されるでしょう。オーストラリア生まれのブランシェットはドイツ語とアメリカ英語をマスターし、ピアノと指揮をプロフェッショナルから本格的に学んだそうです。演奏シーンはすべてブランシェット自身が演じていて、迫力を感じます。
フィールド監督はブランシェットについて「リサーチに至るまで本当に抜かりないし、彼女はまさに独学の達人だね。制作期間中はろくに睡眠もとらなかった。1日の撮影が終わると、ピアノに直行するか、ドイツ語とアメリカ英語の指導を受けに行くか、指揮棒の振り方を教わりに行っていた」と明かし、称えています。
コンサートマスターで、ターの恋人として養女を一緒に育てるシャロンはニーナ・ホスです。
音楽界の頂点に上りつめたターは、自身の名声を守り続ける重圧に苦しみます。ターの行動をめぐってSNSで繰り広げられるキャンセルカルチャーに追いつめられます。