けがなどの苦難を乗り越えて地元・岡山で現役を続ける女子サッカー・元なでしこジャパン(日本女子代表)の選手がラジオ番組に出演し、プレーヤーとしての思いや今後の展望について語った。
日本女子サッカーリーグ「なでしこリーグ」2部の吉備国際大学Charme岡山高梁でプレーするのは、岡山県倉敷市出身のDF加戸由佳選手(32)だ。
作陽高校を経て、2004年から2017年途中まで岡山湯郷Belleに在籍。その間には、元なでしこジャパンMF宮間あや氏らとともにチームの中心選手として活躍。その後、バニーズ京都SCを経て、2021年から岡山に戻り、吉国大C入り。チームではキャプテンをつとめる背番号10は、1部昇格のために奮闘を続けている。
そんな加戸選手がサッカーと出会ったのは小学1年生のこと。はじめは「サッカーが好き」という気持ちだけで続けていたそうだが、チーム内の年上メンバーを見ているうちに「もっとうまくなりたい」「日本代表になりたい」という夢を抱くようになる。その思いが現実になったのは2013年。なでしこジャパンに初選出され、実戦デビューも飾った。
一方、これまでのサッカー人生のなかで最もしんどかった出来事は、ひざに大ケガを負ったときのことだと語る。
「お医者さんからは、復帰できるかわからないと言われて……。自分が練習できないなか、試合で自分のポジションに後輩や違う人が出ているのを見るのは、すごく不安でした」(加戸選手)
しかし、どれだけ先の見えないどん底にあっても決してあきらめず。「絶対に復帰する!」という気持ちを絶やさずにいられたのは、「1番近くで支えてくれた家族やチームメイト、そしていつも応援してくださる人たちの支えがあったから」。けがのリハビリに伴い、中学生の頃から13年にわたって在籍していた「大切な場所」からの退団も余儀なくされたが、「絶対にけがを治す」という誓いを胸に、2年近くものリハビリを経て現場への復帰を果たした。
自身にとっての大きな壁を乗り越えた加戸選手。今は若手への思いが現役を続けるモチベーションにもつながっていると話す。
「まだまだできるという自分の可能性を信じているのと、自分がやってきた経験を若い世代に伝えたいですね。同じ環境で一緒にプレーしながら、どういう気持ちでやっているかなど、若い選手といろんな経験を共有できたらいいなと思っています」(加戸選手)
また、さまざまな苦境を乗り越えてきたからこそ、大きな壁にぶつかっている選手たちにも自身の経験を踏まえながらメッセージを送る。
「つらい経験や大変な思いは、誰だって経験したくない。だけど、あとあと振り返ってみると、自分も成長するし、つらいことを乗り越えた先でいい景色が見られる。(つらい経験も)『必要な経験だよ』ということを伝えたいです」(加戸選手)
「『日本代表になりたい』という夢を持てたのも周りの環境のおかげ」と話し、ラジオ番組のなかでもたびだび周りへの感謝を口にした加戸選手。「サッカーも、最初は自分のためにやることが多かった」と振り返りつつ、「いろいろな経験をしてきて、今の自分があるのは周りの人や環境のおかげだなと身にしみて感じるようになりました」と話す姿からは、経験を糧に歩んできた加戸選手の誠実さもうかがえた。
「責任と覚悟」。入団したときに抱いていた思いは、キャプテンとしてチームを率いる立場になったことでよりいっそう強くなったという。