生命保険大手・日本生命の元営業部長(37)が、顧客に対し、架空の保険契約を持ちかけ、少なくとも1億4000万円をだまし取ったとして兵庫県警に逮捕されていたことがわかった。
日本生命阪神支社・西宮北営業部(兵庫県西宮市)の元部長の男(37)は、2017年から2021年にかけて、福岡県の会社役員の男性(40代)に架空の保険契約を持ちかけ、計約1億4000万円をだまし取ったとされる。22日までに神戸地検尼崎支部が詐欺罪で起訴した(現在公判中)。
男性が最初に同社と保険契約したのは2014年。当初は正規契約だった。男はその後、「日本生命の社内の福利厚生制度の一環で、元本保証で高利回り(3.5~8%)の運用益が得られる積立型保険商品がある」と勧誘するようになった。「自分は社内の成績優秀者で、特別に積立制度へ推薦できるから」などと話を向け、男性本人や家族などの名義で16件契約し、詐欺罪の公訴時効(7年)分を含めると、被害総額は約1億8000万円にのぼるという。
男性は昨年(2022年)8月、男と連絡が取れないことを不審に思い、日本生命(コンプライアンス部門)に問い合わせると、「(実際に購入した)保険商品は存在しない。業務との関連性が確認できないので公表もしないし、謝罪もしない。必要であれば、調停を申し立てて解決を図りたい」などと回答したという。
こうしたことを踏まえ男性は、「日本生命という名前で、彼(元営業部長の男を)信用していた。だまされていたとは思わなかったし、強い憤りを感じる」と話した。
男性の代理人弁護士によると、日本生命には全国勤務の営業社員を統括する営業部長が約1500人おり、この事件は今回は営業社員を直接指導・育成する責任者の詐欺行為だと主張。従業員の不法行為により、第三者に対して損害が生じたとして、民法715条に定められた使用者責任に当たり、日本生命に対して賠償請求するなどの措置を取るという。
男は昨年(2022年)3月、日本生命を退職し、だまし取った金を「借金の返済やギャンブルに使った」と供述しているという。