女子サッカーの世界一を決める「FIFA女子ワールドカップオーストラリア＆ニュージーランド2023」に向けて、6月27日から、なでしこジャパン（日本女子代表）のトレーニングキャンプもスタート。2011年大会以来の頂点を目指すための最終の準備も、いよいよ本格的に始まった。しかし、7月20日の開幕まで1か月を切ったにもかかわらず、今大会の日本での地上波放送を含むテレビ中継がいまだに決まっていない。このことについて、なでしこジャパンOGがラジオ番組で危機感を訴えた。
女子サッカー・WEリーグのINAC神戸レオネッサを応援するラジオ番組『カンピオーネ！レオネッサ!!』（ラジオ関西）にも、リスナーから「W杯中継は未来のサッカー選手を育てるための普及の部分で最重要なので、なにがなんでも中継権利を買い取ってほしい」というコメントが寄せられていた。
同番組のパーソナリティーを務める元なでしこジャパンDF川上直子氏は、女子W杯のテレビ放送がなかなか決まらないことについて「私たち大人もショック」と落胆。「（テレビ放送があれば）ニュースなどでも『なでしこが勝った！』などやってくれると思うが、そういうニュースにも取り上げてもらえないかも……」と現状を憂慮する。
日本女子サッカー界のレジェンドの1人は、「将来なでしこを目指す子どもたちに、現状の女子サッカーの世界がこんなすごいんだよというのを見てもらいたい」と、女子W杯のテレビ中継実現を願っていた。
「（女子W杯の放送が決まっていないのは）イチサッカーファンとしては意味がわからない……」と嘆くのは、川上氏とともに同番組でパーソナリティーを務める宮川陽香。「普段女子サッカーを見ない人でも、なでしこの戦いは見るという人もいる。そういう人たちをWEリーグに取り込むためにも（テレビ放送は）必要」と、国内女子サッカーの盛り上がりのためにも、女子W杯テレビ放送の必要性を訴えていた。
先日には国内女子サッカーのプロリーグ「WEリーグ」が、放映権のためのクラウドファンディング実施をメディアを通じて発表。WEリーグの高田春奈チェア（※「高」＝はしごだか）も、自身のツイッターを通じて「今回の件については女子の価値を高めたいFIFAの言い分も、コンテンツとしての価値を測るメディアの判断も、両方理解できるからこそ、それらを少しでも近づけられたらという思いでの行動です。遅いというのもわかる、失敗するかもしれない。でも思い立ったときが一番早い時。やらないで後悔するよりはやって後悔したい」と思いを語っていた。
また、日本サッカー協会の田嶋幸三会長も、なでしこジャパンW杯メンバー発表会見の場で、テレビ放映権の質問が寄せられたときに、「テレビ放映権は今までFIFAと各国のコンソーシアムや各国のテレビ局が交渉をして決めてきたこと。それについて日本サッカー協会は今までもまったく関わってきていない。市場価値のなかで、テレビ局とライツをもっているところがしっかり話して決めること」と前提を述べつつ、「この女子W杯について、放映されない、見ることができないというのはあってはならない」とコメント。
同大会は、FIFAのデジタルプラットフォーム「FIFA＋」では見ることができるというものの、「今まで興味を持っていなかった方、なでしこを応援したくなったという方が、あえてFIFA＋に入っていくかどうか、我々は疑問に思っている。地上波でやることの大切さを僕らは（FIFAに）しっかり訴えていきたいし、FIFAもそのことはわかっている」と、田嶋会長は述べている。
果たして、日本でのテレビ中継が無事に実現できるのか。大会前に吉報が届くのを、女子サッカーに関わる人々、そして、なでしこジャパンを応援するすべての人々が願っている。
※ラジオ関西『カンピオーネ！レオネッサ!!』2023年6月26日放送回より
