そして2023年5月、新型コロナの感染法上の分類が「5類」に引き下げられ、平時の社会経済活動に戻れるよう大幅な対策緩和に踏み切ったものの、夏祭りをはじめ伝統行事の開催にあたり、自粛する雰囲気が残っていたため、「夏祭りのトップを切るからこそ、景気付けを」との思いで、 境内と参道に限定して6年ぶりに露店を出すことを決めた。“負の歴史”を繰り返さないよう、厳密なガイドラインを設定して運営するという。
山岡住職は、日本の誇るべき伝統文化、“祭”の継承のあり方を模索している。10年後、20年後、100年後に「愛染祭」をより良き形で残すため、今が大切だと話す。
そして、「Yesterday is history, tomorrow is a mystery, but today is a gift. (昨日までは歴史、あすからは未知数、今日は与えられたプレゼント)」というフレーズを引き合いに、”祭”は今、どうあるべきかを考えたいと気を引き締める。
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「どうしても日本のお祭りが見たくて」。フランスから留学している女性は、8月には日本を離れる。夏の思い出をカメラに収めたくて、インターネットで関西の夏祭りのスケジュールを調べた。そして行き着いたのが「愛染祭」。同じ大阪の「天神祭」も、京都の「祇園祭」も知っている。しかし、女性の華やかさが際立つ「愛染祭」に心ひかれた。
駕籠に乗る浴衣姿の女性たち、チャンチキ(摺鉦・すりがね)の軽く跳ねるような音が、心に響く。「フランスでは感じることができない“和”のテイスト。とてもいい思い出になりました」と微笑んだ。