神戸市をホームタウンとし、女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」に所属するINAC神戸レオネッサ。クラブ創設からこれまでの歴史を振り返るとともに、現在の活動や今後の展望についてINAC神戸を運営するアイナックフットボールクラブ株式会社代表取締役社長の安本卓史さんに話を聞きました。
クラブ創設の歴史は、2001年にさかのぼります。2002年に本格的に活動をスタートさせ、2005年にL・リーグ（現、「なでしこリーグ」＝日本女子サッカーリーグ）へ加入すると、わずか1年で2部優勝、1部へ昇格。その後も、外国籍選手や、なでしこジャパン（日本女子代表）の選手らを軸に躍進を続けると、2011年の元日に行われた第32回全日本女子サッカー選手権大会（現在の皇后杯）決勝では、浦和レッズレディース（現、三菱重工浦和レッズレディース）をPK戦の末に下して初優勝。トップカテゴリーで念願のタイトルを獲得しました。当時のメンバーにはGK海堀あゆみさんやFW川澄奈穂美選手（現、NJ／NYゴッサムFC／アメリカ）らが名を連ねました。
そして、2011年からはクラブに黄金期が到来。なでしこジャパンの大黒柱であるMF澤穂希さんをはじめ、FW大野忍さん、DF近賀ゆかり選手（現、サンフレッチェ広島レジーナ）ら実績抜群の選手たちが続々加入すると、スター軍団となったチームは、そのシーズンのリーグ戦で13勝3分という圧倒的な数字を残し、クラブ創立10年で初のリーグ制覇を果たしました。
また、同年に行われたFIFA女子ワールドカップドイツ2011には、INAC神戸から7人が選出され、歴史的な大会初優勝に大きく貢献。MVPと得点王には澤さん、大会の優秀選手にあたるオールスターチームには澤さん、大野さん、海堀さんも選ばれました。澤さんは、アジア人史上初となる2011年度「FIFA女子年間最優秀選手賞（バロンドール）」も受賞しています。
その後も、澤さんを中心に常勝軍団を形成したINAC神戸は、2011年からリーグ戦を3連覇するなど、タイトルを次々と獲得。2013年度には国内主要3大会と国際女子サッカークラブ選手権で優勝し、4冠も達成。DF鮫島彩選手（現、大宮アルディージャVENTUS）も加わった2015年度の最終戦では、澤さん、海堀さんの現役ラストマッチとなった皇后杯決勝で勝利し、2人の花道を優勝で飾りました。ちなみにその試合の決勝ゴールを決めたのも、日本女子サッカー界のレジェンド・澤さんでした。
2016年度の皇后杯優勝を最後に、しばらくはタイトルに手が届かない時期もあったINAC神戸。それでも、2021年秋からスタートした日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」では、2011年・2012年シーズンの2連覇に貢献した星川敬氏が監督に再就任。2009年からクラブ一筋のFW高瀬愛実選手（※「高」＝はしごだか）によるWEリーグ初得点を皮切りに、開幕から8戦連続無失点、16戦連続無敗という圧巻の戦いを見せ、クラブ創設から20年という節目にWEリーグ初代王者に輝きました。初代MVPにはGK山下杏也加選手が選ばれました。
ヴィッセル神戸で長らく活躍した経歴を持つ朴康造氏が新指揮官となった2022-23シーズンでは、WEリーグ2連覇を目指すも、13勝5分2敗、勝点44で惜しくも2位。それでも、FW田中美南選手やDF守屋都弥選手らを中心にアグレッシブな戦いを展開し、MF愛川陽菜選手ら若手の成長も見られただけに、今秋からの新シーズンではタイトル奪還を目指します。
そして、7月20日からはいよいよFIFA女子ワールドカップ オーストラリア＆ニュージーランド2023がスタート。INAC神戸からはGK山下選手、2022-23シーズンのチームキャプテンでもあるDF三宅史織選手、DF守屋選手、FW田中選手が、なでしこジャパンに選出されています。また、INAC神戸に在籍経験がある選手では、MF杉田妃和選手（ポートランド・ソーンズFC／アメリカ）とFW浜野まいか選手（ハンマルビーIF／スウェーデン）も名を連ねました。2011年以来となるW杯制覇を目指すなでしこジャパンで、INAC神戸のユニフォームに袖を通してきた選手たちの躍動にも期待せずにはいられません。
