旧統一教会をめぐる一連の問題で、自民党をはじめ野党の一部など政界と旧統一教会との半世紀にもおよぶ関係性が次々と表面化し、「霊感商法」や「合同結婚式」などが社会問題として一旦は再燃したものの、世間はそろそろ、旧統一教会への厳しい監視の眼を忘れかけている感がある。
岸田文雄首相(自民党総裁)は2023年1月31日、旧統一教会との関係を断絶する方針を決定した。しかし野党は、自民党が旧統一教会の「関連団体」を「隠れ蓑(みの)」にするかのような関係を継続していると主張する。
一方、自民党内からも「安倍元首相が、旧統一教会に対する自民党側の窓口役だったのではないか」という見解が噴き出したものの、実際に旧統一教会の票を差配していたのか否かなど、それ以上の追及は望むべくもないようだ。
旧統一教会による被害の中では、「霊感商法」が最も特徴的だ。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、最近35年間で全国の弁護団などが相談を受けた旧統一教会の「霊感商法」による被害額は約1237億円にものぼるという。
「夫や息子が地獄で苦しんでいる」「先祖の悪因縁が祟っている」などと、相手の不安をあおることによって、高額な商品を買わせたり高額な献金をさせたりする行為が「不法行為」にあたることは、数々の民事裁判の判決で明らかになっている。
亡くなった家族の「霊界」での苦しみを指摘するなどして寄付や献金を迫る「霊感商法」は、結局のところ、反社勢力が得意とする「詐欺・脅迫行為を手段とする経済的利益の追求」と、いったいどこが違うというのか。
我々弁護士は、時として反社会勢力との「対峙」を余儀なくされることも多い。「弁護士さんにも、奥さんや子どもさんがいますよね?」などと「脅し文句」を投げかけられた経験もたびたびあった。
なお、2007年に公表された政府指針で、「反社会的勢力」とは「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されている。私にはこれらを「軌を一にするもの」としか感じられない。
被害者救済法では、霊感などの知見を使って不安をあおり、寄付が必要不可欠と告げるなど、個人を困惑させる不当な勧誘行為を禁止している。しかし、個人の自由な意思を抑圧して適切な判断を施すことが困難な状況に陥らせないようにする点につき、「禁止」でなく「配慮義務」にとどめた点が、極めて不十分であることは誰の目にも明らかであろう。この新法が「ザル法」と揶揄(やゆ)されるゆえんである。
また、被害にあった信者らが、どのようなプロセスと時間をかけてだまされ、また「教化」されていったのかという視点が抜け落ちており、最も問題視されるべき「マインドコントロールによる教化の根源」にまで踏み込めなかった点は、新法の大きな「欠陥」である。今後の改正に待つよりほかはない。