神戸市出身の刺しゅう作家、蝸牛あや(1978~)の作品は、刺しゅうでありながら、まるで絵画のような自在なタッチだ。繊細な一針一針が、一度見たら忘れられない、独特の深みのある世界を形成している。
今展のために制作、出品した「王国」は、巻き貝の殻をモチーフとし、城砦や鳥の羽根を控えめな輝きをまとわせながら神秘的に描出。「現代の人の心に寄り添えるような、祈りを込めた作品を作りたい」と語る蝸牛のメッセージが伝わってくる。
そのほか、小坂学(1979~)のペーパークラフト、長谷川清吉(1982~)の金工、稲崎栄利子(1972~)の陶磁、青木美歌(1981~2022)のガラス工芸などの現代作品に加え、安藤緑山(1885~1959)の精緻な牙彫など、明治工芸の優品も展示しており、見どころ多数。
山下教授は「17人の現代作家は技術が優れているだけでなく、アスリートのように唯一無二の表現に挑んでいる。それぞれの表現を堪能してほしい」と話した。
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◆「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」
会場:あべのハルカス美術館(〒545-6016 大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階)
会期:2023年7月1日(土)~9月3日(日)
開館時間:火~金/10:00~20:00、月土日祝/10:00~18:00。いずれの日も入館は閉館の30分前まで。
観覧料(税込):一般1,600円、高大生1,200円、小中生500円