ピアノの鍵盤の数 なぜ“88”? 楽器研究家「元々は54程度」「メーカーによっては97のものも」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

ピアノの鍵盤の数 なぜ“88”? 楽器研究家「元々は54程度」「メーカーによっては97のものも」

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 子供から大人まで、趣味や習い事の王道としても知られる楽器の王様・ピアノ。88の鍵盤を持ち多彩なメロディを奏でるピアノは、なぜこのような姿になったのでしょうか?

 音楽や楽器について研究している、京都大学大学院人間環境学研究科・准教授、上田泰史さんに聞きました。

ピアノの鍵盤の数はなぜ88?

 現在の一般的なピアノは88鍵、つまり7オクターヴと3度(ラシド)という音域をもっています。上田さんによると、ピアノにははじめから88の鍵盤が備わっていた訳ではなく、18世紀初頭にイタリアのフィレンツェで発明されてから、少しずつ拡大していったそうです。

 もともと、開発当初のピアノには54程度の鍵盤しか備わっていませんでした。西洋音楽の歴史の中で「バロック時代」と呼ばれた当時、作曲や演奏に使用される音の範囲は今よりも少なかったそうです。その後、モーツァルトやベートーヴェンが活躍した「古典派」と呼ばれる時代を経てショパンやリストが活躍した19世紀の「ロマン派」と呼ばれる時代になると、オーケストラのようにピアノを響かせるダイナミックな曲が生み出され、作曲家や演奏家から「もっと幅広い音域を響かせたい」という要望が出るようになりました。

ピアノの鍵盤、なぜ88?
音楽史の変遷の中で、鍵盤の数は増えていった

 作曲家や演奏家たちが表現力を探究するようになったことでピアノの鍵盤の範囲が広がり、20世紀には88の鍵盤を備えたピアノが主流になっていきました。上田さんは、この幅が、成人が演奏できるちょうど良い幅の上限だったのではないかと分析しています。

  また、鍵盤の最高音が「ド」になった理由について、上田さんは、白い鍵の並びが作り出す基本的な音階である「ハ長調」に合わせたからではないかと考えているそうです。クラシック音楽に使用されるハーモニーで最も基本的な“ハ長調”の音階が「ドレミファソラシド」であることから、ピアノの鍵盤も、このハ長調の楽曲を演奏した際にキリ良く上がり切れる並びになったのではないかということでした。

 さらに、最低音が「ラ」になっている理由については、音階の歴史との関係があるかもしれないと考えているそうです。中世ヨーロッパの音楽理論の専門家たちは、音階のそれぞれにアルファベット順で「A・B・C・D・E・F・G」と名前を付けました。この最初のAの音は、私たちがピアノの鍵盤上で「ラ」と呼んでいる音にあたります。「ラ」の音は現在の西洋音楽でも基準とされる音で、オーケストラで初めに楽器の音をチューニングするために出す音としても使われているそうです。

 ただし、オーストリアのウィーンにあるピアノメーカー『ベーゼンドルファー社』では、20世紀初期から低音を拡大したピアノを作っているそうです。同社の「Model 290 Imperial」というモデルのピアノは97の鍵盤が並び、最低音がドまで拡大されているといいます。

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