サッカー・J1のヴィッセル神戸は、第23節までを終えて、勝点を47に伸ばして首位の座をキープしています。直近のJ1第23節、川崎フロンターレとのアウェイ戦では、エースFW大迫勇也選手の今シーズンJ1リーグ戦17得点目となるゴールを守り切り、1-0で勝利。3試合ぶりの白星、11度目のクリーンシートを記録しました。この一戦では、目立たないかもしれませんが、攻守両面で勝利を手繰り寄せるいぶし銀のプレーが見られました。
大迫選手のプロになってから初となる直接FKのゴールが決勝点となりましたが、そのきっかけとなった一連の流れも、試合の趨勢を決定づけるものでした。大迫選手のキープとラストパスのすごさと、カウンターで抜け出したジェアン・パトリッキ選手の快足が、相手DFのファウルを誘い、直接FKを得ただけでなく、相手が1人退場に。ここから数的有利を得たのですが、見逃せないのは、大迫選手にボールがわたったときのプレーです。
川崎FのMF脇坂泰斗選手が中央から左足でミドルシュートを狙ったところ、それをペナルティーエリア内で足で止めたのは、DF本多勇喜選手です。そこから背番号15は、単に大きくクリアしてピンチを逃れるというのではなく、すぐに右足でセンターサークル付近にいた大迫選手へパスを出しました。これが、この試合の勝敗を左右する大きなプレーの契機となったのです。
名古屋グランパス、京都サンガF.C.を経て、今シーズンからヴィッセルの一員となった本多選手。昨年、京都では出番に恵まれなかったのですが、港町のクラブではここまでJ1リーグ戦で22試合に出場し、そのうち19試合で先発しています。
173㎝とセンターバックとしては決して上背は高くはないなかでも、跳躍力の高さをいかして競り合いでも奮闘するなど、身体を張ったディフェンスを随所に披露している、32歳のレフティ。攻撃面でも、後方からのフィードでチャンスを切り開くなど、チームへの貢献度は高いものがあります。けが人が続出しているクリムゾンレッド守備陣のなかで貴重な存在となっているのは間違いありません。7月22日のJ1第16節延期分・川崎F戦でJリーグ通算300試合出場も達成しました。
今回のプレーについて、本多選手に直接お話を聞けていないのですが、チームとしても後方からのビルドアップで高さとキープ力のある大迫選手を狙うプレーが徹底されていることもあり、あのつなぎは、今年のヴィッセルらしさが垣間見えたワンシーンと言えるかもしれません。
一方、この川崎F戦で、ヴィッセルは1人多いながらも終盤にかけて相手に攻め込まれるシーンがあり、アウェイチームにとって苦しい時間も続きました。アディショナルタイム6分のところでは、この試合でキレのよい動きを再三見せていた川崎Fの脇阪選手が中央突破を試み、クリムゾンレッドは窮地に陥りそうになります。
そこをファウル覚悟でスライディングを仕掛け、この突破を止めたのが、DF大崎玲央選手です。(※「崎」=たつさき) 結局、ラフプレーの反則で大崎選手にはイエローカード(警告)が出されましたし、決してほめられるプレーではありませんが、チームのために汚れ役をいとわなかった大崎選手からは「絶対にここで止める!」と言わんばかりのDFとしての熱、勝利への執念を感じさせられました。
大崎選手は2018年6月からヴィッセルでプレーし、今年で6シーズン目。最近では主に途中からの出場が多いのですが、後方からの舵取りができるだけでなく、守備でもここぞの場面で身体を張ってブロックし、競り合いでもタフに戦える選手の1人です。