神戸市中央区、ベイエリアのショッピングタウン・ハーバーランドにある「はねっこ広場」に面した倉庫の屋根と壁面では、作業服にヘルメット姿の作業員たちが24時間体制で作業をおこなっています。彼らはペンキを塗ったり、はしごを登ったり、ブロックを持ち上げたりしているのですが、よく見ると全く動いていません。この“謎の作業員の正体”について『神戸ハーバーランド株式会社』の広報担当・楠岡希実子さんに聞きました。
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謎の作業員は8人。現場は『JR西日本神戸支社』の倉庫だといいます。初めて姿を現したのは1991年4月のこと。結論からいうと、彼らは作業着を着せたマネキン人形で「ユーモアディスプレイ」と名付けられた、ハーバーランドの観光スポットなのだそうです。
「ユーモアディスプレイ」は1991年、神戸ハーバーランドの完成に先駆けて案内所やレストランがオープンしたときに、整備中の風景を楽しくしようと神戸市が一時的に設置したものでした。それぞれリアルな作業員のポーズをさせることで風景に馴染ませ、一見本物の作業員と見間違えさせる……というユーモアを狙っていたといいます。このディスプレイは客から「面白い!」と好評だったため、1992年の街びらき以降も引き続き設置されることになりました。
設置当初マネキンは11体設置されていたといいます。しかし、阪神淡路大震災や台風等で被害に遭ったこともあり8体となってしまいました。現在のものは、2006年9月にリニューアルされた“2代目”なのだそう。この経緯としては、設置からおよそ14年が経過した2005年に建物の設備の撤去に伴って5体を回収。その後、同年に年月の経過とともに痛んでいた残りの3体も回収し、修復をしたのち再設置しているとのことです。
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今、彼らは雨風等で飛ばないよう1体ずつステンレスのワイヤーで固定され、その勇姿を人々に見せ続けています。
(取材・文=村川千晶)