1964年から続く、世界で唯一の子どもの本専門の国際見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」で行われている絵本原画コンクールで、今年=2023年に入賞した作品をすべて紹介する「2023 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」が、西宮市大谷記念美術館で開催されている。2023年10月9日(月・祝)まで。
この絵本原画コンクールは、5点1組のイラストを用意すればだれでも応募できる公募展で、すでに絵本として発表された作品も未発表のものもすべて公平に審査される。2021年からはオンラインでの応募となったため、応募数は年々増え、今年は過去最多の91の国・地域から4345組の作品が寄せられた。その中から、日本人5人を含む27の国・地域、79作家が入選した。会場ではすべての入選作品を展示する。
今年の入選作品について、西宮市大谷記念美術館の作花麻帆学芸員は「コロナ禍で生活スタイルが変わったためか、何気ない日常に目を向けた作品が多いように感じる」と話す。友達と出かけたり、家族とのやり取り、街や市場の風景など、身近なテーマの他、冒険や旅を描いたものもあり、「コロナ禍を終えて新たな一歩」ととらえられる作品もみられる。そしてどの作品からも作家のバックグラウンドを感じることができる。
イタリアの作家・ロレンツォ・サンジョの「物語のすごい力」の主人公は、「物語の登場人物になる自分の姿を想像するのが大好きなネコ」。絵本の中で魔法使いになったりカウボーイになったりする。「作家本人は来日したことはないものの日本のアニメや小説が好きなようで、武士だったり、『これって日本の有名な映画のキャラクターがモチーフかも?』という姿もある」(作花学芸員)。
ウクライナの作家・ユリヤ・ツヴェリチナの「戦争日記」。ウクライナ出身の作家の作品として、これまでなかった戦争がテーマとなっている。目の前で起こった爆発の炎や煙にスマートフォンを向ける人と水らしきものを持って逃げる人。シェルターに避難しているのは人間だけではなくペットも。ごった返す駅の構内で別れを惜しむ2人と犬。今のウクライナの姿がそこにある。作花学芸員は「私たちがニュース映像で見るのとは違い、当事者目線の現実が描かれている」と言う。
それぞれの5枚1組の作品にはキャプションがついているものもあればついていないものある。切り絵やコラージュ、刺繍など技法も様々だ。「どんなストーリーなのか想像しながら見るのもいいし、印刷物では感じ取ることが難しい原画ならではのタッチや紙の質感も楽しんでほしい」と作花学芸員は話す。