サッカー・J1で首位のヴィッセル神戸（勝点55）は29日に行われる第29節で、2位の横浜F・マリノス（同54）と、アウェイの日産スタジアム（横浜市）で対戦します（キックオフ予定は午後7時）。残り6試合となったリーグ戦、9月末にやってきた首位攻防戦という大一番を前に、試合前日の28日、ヴィッセルの吉田孝行監督が意気込みを述べました。
中断明けの16日、第27節でサンフレッチェ広島に0-2と完敗を喫したなか、23日に行われた前節ではセレッソ大阪との関西上位決戦を制したヴィッセル。広島戦の課題を修正できただけでなく、今シーズンのベースとなっていた強度の高い守備を取り戻し、1-0という完封勝利をおさめたことで、チームは自信を取り戻しました。
上昇ムードのなかでやってくるのは、J1頂上決戦です。「34試合うちの1試合とはいえ、大事な試合」というヴィッセルの吉田監督は、「自分たちはチャレンジャー。自分たちが今までやってきたサッカーをしっかり出せるよう、今週もいい準備をやってきた。選手には思い切ってやってもらいたい」と、意気込みを述べます。
相手の横浜FMには、これまで9勝12分け28敗と大きく負け越しているヴィッセル。昨シーズンはホーム・ノエビアスタジアム神戸での最終節で1-3と敗れ、王者が優勝を決めて歓喜する様子を見せつけられました。また、今シーズン最初の対戦でも、2点を先行しながら、その後、3失点を喫して逆転負け。ホームで悔しい思いを立て続けに経験しています。
それでも、昨年8月のAFCチャンピオンズリーグ（ACL）ラウンド16では飯野七聖選手、佐々木大樹選手、小田裕太郎選手（現ハーツ/スコットランド）のゴールで3-2と勝利しました。また、今年の対戦では敗れたとはいえ、横浜FM育成組織出身の汰木康也選手の1得点1アシストの活躍や、大迫勇也選手のヘッドでのゴール、また、VARによる際どいオフサイド判定となった大迫選手の幻のゴールなどもあり、王者と互角の戦いを展開しています。
指揮官も、「（前回も）決して悪い試合をしたわけではない。内容的にこっちが勝ってもおかしくなかった試合。昨年のACL、今年の前半戦と『行ける』という感覚は選手たちにもあったのかなと思う。同じような（強い）気持ちで戦う」と、前を向いています。
相手について「攻から守、守から攻のトランジションが速い。前線に個で打開できたり、素晴らしいフィニッシャーがいる」と警戒しますが、「分析をして相手のよさを消し、自分たちの良さを出すことを考えたい」とコメント。ヴィッセルとしては、昨年のACL、今年の対戦で見せたような、ハイプレスや攻守での強度の高さをいかしたプレーで、横浜FMにプレッシャーをかけていきたいところです。齊藤未月選手という軸が長期離脱を強いられているなか、前節ではクラブ生え抜きの佐々木選手の殊勲弾や、今シーズンJ1初先発となった前・横浜FMの扇原貴宏選手の躍動など、明るい話題も多く生まれました。この一戦でもヒーローの出現を期待せずにはいられません。
そのなかで、記者からは、現在3試合得点のないエースストライカーの大迫選手のゴールに期待するかという質問も。「得点は誰にでもチャンスがくるし、サコ（大迫）だけでなく、みんなに期待したい」という吉田監督。それでも、「大事な試合こそ決めるのがサコ。昨年も何度も（試合）終盤に奇跡を起こしてくれた選手なので、（今回も）決めてくれると思う。彼はチームのためにプレーし続けていて、（得点は）それを出したベースでのもの。でも、サコは取りますよ！」と笑顔で語り、クリムゾンレッドの10番に全幅の信頼を寄せていました。
吉田監督が現役時代にプレーしていた古巣との対決は、今シーズンを占う重要な一戦になることは間違いありません。それでも、港町・神戸のレジェンドは、大事な試合を前日に控えて、「自分のなかでは今はすっきりしている」と心境を吐露。「今日のトレーニングが終わって、自分のなかで『間違ってないな』と、『すっきりしたな』と（いう思い）。選手たちも一生懸命戦ってくれる。最後の結果について、こればかりはどちらに転ぶかわからないが、それよりも後悔しないよう、自分たちがやってきたことをやる」と、大一番へのチームの心身の準備も整っているようでした。
悲願のリーグ優勝のためには、同じ相手に1年で2度敗れるわけにはいきません。ヴィッセルは前節セレッソ戦のような戦いを発揮して、横浜FMにリベンジを果たしたいものです。あすの決戦には大きな注目が集まります。
