「平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)」(螺鈿飾りの鏡)は、正倉院に9面伝わる螺鈿飾りの鏡の中でも大型で、高度な技術と優れたデザイン性を兼ね備えた名品。ヤコウガイと琥珀(こはく)で花模様を表し、地の部分には細かいトルコ石をちりばめた、ぜいたくな鏡で、中国・唐製と推定されている。
一見、本物のカメと見まがう、ふた付きの容器「青斑石鼈合子(せいはんせきのべつごうす)」は、はっきりとした用途は分かっていないが、道教思想に基づく仙薬(せんやく)を入れていたという説も。蛇紋岩(じゃもんがん)でふたとなるスッポンの形を彫り出し、腹の部分に八稜形(はちりょうがた)の皿が収まる構造で、甲羅には反転した北斗七星が金と銀で描かれている。リアルな動物彫刻としても楽しめる逸品だ。
宮内庁正倉院事務所(奈良市)では、長い歴史の中で、残片となったものの研究も進めており、今展では、バラバラになった厨子や文書などの復元についても紹介。
三本研究員は「天皇ゆかりの宝物から、東大寺で使われていた仏教関係の工芸品、平城宮の宮廷文化を感じ取ることができる楽器や踊りの衣装、調度品、アクセサリーまで、奈良の都の最先端の文化を一望できるようなラインアップ。貴重な宝物を多くの人に見てもらいたい」と話している。
◆「第75回 正倉院展」
会場:奈良国立博物館(〒630-8213 奈良市登大路50)東新館・西新館
会期:2023年10月28日(土)~11月13日(月) ※会期中無休
開館時間:午前8時~午後6時 金土日曜と祝日は午後8時まで。いずれの日も入館は閉館の60分前まで。
観覧料:一般2,000円、高大生1,500円、小中生500円(月~木曜の午後4時以降、金土日曜と祝日の午後5時以降に適用される「レイト割」あり)
※観覧券は事前予約の日時指定制、先着順で、10月5日(木)午前10時からローソンチケット、展覧会オンラインチケットなどで販売開始。奈良国立博物館観覧券売場での販売はない。
問い合わせ:ハローダイヤル050-5542-8600
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