「美術の中のかたち同窓会」では、同館が1989年から開催する「美術の中のかたち―手で見る造形」で登場回数の多かった、オーギュスト・ロダンの「痙攣する大きな手」など、「ベテラン」の作品を展示する。
「美術の中のかたちー手で見る造形」は、兵庫県立美術館恒例の、触って作品を鑑賞できるシリーズ展で、今回33回目。染織によって制作を行う遠藤薫の作品を展示する。
人間の赤ちゃんは、視覚よりも触覚や嗅覚などの感覚の方が先に培われる。また生命の誕生の源をたどると細胞=つまり球になる。この展覧会の準備期間中に出産を経験した遠藤さんは、視覚とは、眼球とは何か、生きて死ぬこと、人間とは何かについて知りたくなったという。「眼と球」という展覧会のタイトルには、Me and Q、私と問いという意味が込められている。何かが「生まれていく」ということに焦点を当て、触覚・嗅覚・聴覚で体感できる作品を制作した。
麻布(ジュート)で作られた作品「Canvas/ 1945/ Hyogo Japan」は、かつて神戸港でスパイスの輸出入のため使われていた麻袋を用い、落下傘に仕立てた。自ら作った画材や戦時中に唯一国産の絵の具を生産していた会社の絵の具などを塗り上げ、触ることで布地や絵の具の質感がわかる。またスパイスの香りもかすかに残っており、視覚以外で「鑑賞」できる。ジュート麻袋は、戦時中、陣地に積み上げられた土嚢袋になり、物資が不足すると画布にも代用されたという。そして輸出入のために使われた麻袋は、現在も植物を育てることに再利用され、ひっそりと土に還っている。「この『Canvas』は落下傘であり、かつての船の帆であり、画布であると同時に、眼球と子宮の形を模したものになった。そんな麻布が示す『命の循環』を、見る人の感覚で、触って、歩いて感じてほしい」と、遠藤さんは話す。
2023年度コレクション展Ⅱ
【特集】Welcome!新収蔵品歓迎会
【小企画】美術の中のかたち―手で見る造形 遠藤薫 眼と球
2023年9月8日(土)~12月24日(日)*会期中 一部展示替えあり
休館日 月曜日 (ただし10月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)は休館)
兵庫県立美術館 常設展示室(1階・2階)
*コレクション展無料観覧日 10月8日(日)、11月3日(金・祝)、4日(土)、5日(日)、12日(日)、18日(土)、19日(日)、12月10日(日)