賃貸住宅に住んでいると「前に住んでいた人の荷物が届いてしまった」ということはありませんか? DMやカタログなど前居住者にとって重要ではなさそうな郵便物もあれば、中にはお中元などのしっかりした食品が届いてしまった……という経験を持つ人もいるそうです。
郵便物の場合は廃棄せず郵便局に連絡を入れる必要があります。ですが、面倒臭がって廃棄してしまったり、食品を食べてしまったりした場合は罪に問われるのでしょうか? 「かなえ法律事務所」(神戸市中央区)の森本圭典弁護士に聞きました。
日本郵便のQ&Aによると、前に住んでいた住人あての郵便物や荷物が届いてしまった場合「お住まいの配達を担当する郵便局へ、その旨をご連絡くださいますようよろしくお願いします。社員が訪問を行う等して、居住確認をさせて頂きます」とあります。
また、別の方法として「郵便物の表面に誤配達である旨記載した付せん等を貼っていただき、郵便ポストに投函してください」とも案内が。これらの対処法については郵便法第42条(誤配達郵便物の処理)にもあり、法律で定められているようです。
では前住居者の配達物を勝手に捨ててしまうとどのような罪に問われるのでしょうか? 森本弁護士によると、「届いたものによって変わる」とのこと。まず、電気料金の請求書や領収書など “私用文書”の場合は「私用文書等毀棄罪(刑法第259条)」にあたるとのこと。「権利または義務に関する他人の文書(私用文書)または電磁的記録を毀棄した場合に成立します。法定刑は『5年以下の懲役』です」(森本弁護士)。そして、私用文書には当たらない他人の信書(一般的な郵便物、メール便など)の場合は「器物損壊罪(刑法第261条)」にあたり、「法定刑は『3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料』です」(森本弁護士)とのことです。
ただ、森本弁護士によると「どちらも親告罪であり、刑事訴追には被害者の告訴が必要なので、実際に処罰に至るケースはあまり想定されません」とも。それでも「他人宛の配達物を勝手に捨てるのは立派な犯罪ですので、注意が必要です」とのことでした。
郵便局以外の配達業者からの荷物の場合はどうなのでしょうか。例えばクロネコヤマトのHPによると「開封の有無に関わらず、セールスドライバーが回収にお伺いしますので、ご連絡頂きますようお願いします」とあり、まずは配達業者に連絡をとってその後の対応について案内してもらうのが良さそうです。
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他人あての届け物を捨てたり食べたりするのは犯罪に該当します。面倒かもしれませんが、しっかり対処しましょう。
(取材・文=宮田智也)