秋の行楽シーズンまっただ中。週末には友人や家族との楽しみが増える季節ですよね。なかでも動物園や水族館はお出かけの定番スポットとして人気が高く、老若男女で賑わっていることでしょう。
多くの生き物が見られるこれらの施設ですが、彼らを数えるとき「匹」と「頭」をどのように使い分けていますか? 実は、動物の数え方にはある一定の基準があるのです。ものの数え方をまとめた『数え方の辞典』の著者である、中央大学 国際経営学部の飯田朝子さんに聞きました。
飯田さんによると、現代の日本語では原則として人間の大人より小さい生物類を「匹」、大きな生物類を「頭」と数えるそうです。基本的には“人間に恐怖を抱かせる大きさ”かどうかが基準となっているとのこと。
現在の基準が決められたのは、日本で見られる動物の種類が増えたことで、大きさによって数え分ける方が便利だったからだそう。しかし「頭」は必ずしも大きさによるものだけではないそう。生物学的に珍しいチョウなど貴重な生物を数える際に使われたこともあり、「匹」と「頭」の基準を作った理由の一つになったそうです。
そもそも数え方に基準ができ始めたのは、明治時代中期頃から。江戸時代には動物に対して「頭」という考え方は存在せず、生き物全般は「匹」で数えていました。明治時代、西洋から入ってきた文献の中に動物園などで飼われている動物を「head(頭)」と数える例があり、当時の学者がその文を日本語に直訳したことから「匹」とは別に「頭」と数えるようになったそうです。最初は知識人などが使っていましたが、1916年(大正5年)に夏目漱石が新聞小説のなかで馬の数え方を「頭」と書いたことから庶民の間でもこれが広まっていき、動物の数え方は「匹」と「頭」が大きさ等に応じて使い分けられるようになりました。とはいえ、生物の数え方には他にも「羽」や「尾」などがあるため、飯田さんいわく「限定しないほうが良い」とのこと。
「匹」と「頭」の数え方の境界線にいる動物として、大型犬・オオカミ・ワニ・ヒツジが挙げられます。これらの赤ちゃんは「匹」です。ですが先述した現在の基準にあてはめると、人間に恐怖を抱かせる大きさに成長した場合は「頭」となります。
“恐怖”とはかけ離れているように思うヒツジも目の前にいれば意外と大きいため「1頭」です。しかし牧羊地に群れて遠くに見える場合は「1匹」でも受容します。眠れない時に「ヒツジが1匹、2匹……」と数えるのは、ヒツジが恐怖の対象ではなく群れのイメージで小さく感じているためだそう。目の前に動物がいない場合は、一般的なサイズ(図鑑や動物園で見る成体の標準的なサイズ)を基準に、「匹」と「頭」の数え方が決まるそうです。
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ウサギは「羽」、水揚げされたヒラメを「枚」と数えるなど生き物の数え方はさまざま存在します。動物だけでなく、日常的に目にするものの数え方にも着目してみるとおもしろい発見があるかもしれません。
(取材・文=迫田ヒロミ)