身体の違い、感覚の違いを五感で感じるダンス公演 神戸・新長田で10月26日から | ラジトピ ラジオ関西トピックス

身体の違い、感覚の違いを五感で感じるダンス公演 神戸・新長田で10月26日から

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 昨年、豊岡演劇祭フリンジセレクションにて鮮烈なデビューを果たしたミックスエイブルダンスカンパニー「Mi-Mi-Bi」の公演『未だ見たことのない美しさ』が10月26日(金)〜28日(土)の期間、小劇場「ArtTheater dB KOBE」(神戸市長田区)で開催される。

 劇作家・演出家 平田オリザさんのラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、同カンパニーで演出を務める森田かずよさんとプロジェクトマネージャーの文(あや)さんが出演。盲・ろう者を含む身体に障がいをもったパフォーマーらによる、創作現場でのコミュニケーション方法や醍醐味について語った。

ミックスエイブルダンスカンパニー「Mi-Mi-Bi」の演出・森田かずよさん(写真中央右)、プロジェクトマネージャーの文さん(同中央左)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同右)、田名部真理(同左)

 ミックスエイブルとは、さまざまな障がいをポジティブにとらえつつ、感性・個性・特性がさまざまな「人」「もの」「こと」が混じりあうことをいう。ミックスエイブルダンスカンパニー「Mi-Mi-Bi」は、見えない人、聞こえない人、脳性麻痺、車いすユーザーや義足など、体の特性や個性、感覚、背景が異なるパフォーマーらが生み出す独自の世界観が魅力のダンスカンパニーだ。カンパニー名は本公演のタイトル『未だ見たことのない美しさ』の頭文字から取った。

 2022年9月に開催された『豊岡演劇祭』フリンジセレクションでの旗揚げ公演が大きな話題を呼び、その後、ゲーテ・インスティトゥートとドイツの国際演劇祭『Festival Theaterformen』が共同で立ちあげた“A Gathering in a better world”にプログラムディレクターとして招へいされるなど、国内外から注目を集めている。

 同公演の演出は、2020年東京パラリンピック開会式でのパフォーマンスが記憶に新しい、義足のダンサー・俳優の森田かずよさんが務める。森田さんは先天性側弯症・二分脊椎症などの障がいを持って生まれた。高校2年生のころに表現の道を志したが、当時は障がいをもつ学生の受け入れが整っている芸術系大学がなく、そのときに初めて「自分には障がいがあるのか」と気づいたのだという。当時の心境について、森田さんはこのように語った。

「障がいがあっても舞台に立てるということを自分の身体で証明してやろう。最初はそうした思いから俳優として舞台に立ちはじめました。踊ることについては、そんな活動をしている人はまだ周りにいなかったし自分自身に抵抗もあったんですが、自分の体に向き合っていくうちにダンスの要素を取り入れたくなって。今はダンスが主流です」(森田さん)

『未だ見たことのない美しさ』は、昨年2月のダンスボックス(神戸)で創作したソロ作品やデュオ作品をベースとした舞台だ。今年開催された『豊岡演劇祭』では、「自分にどんなことができるか、どんな風に見せることができるか」というダンサーの感覚を、演者だけでなく観客にも共有してもらう作品として深化。そして今回の神戸バージョンでは、車いすのスピード感をより伝えやすくするなど、劇場の空間を生かした舞台となっている。

『未だ見たことのない美しさ』(豊岡演劇祭バージョン)

 プロジェクトマネージャーの文さんによると、見えない人と聞こえない人がいる現場では、どのようにしてコミュニケーションを成立させるかが課題だったという。稽古現場について、このように振り返った。

「手話通訳者がいない稽古ではタブレットを活用したほか、視覚障がいを持つ人のナビゲートにはライトを使ったり、舞台上に手触りで知覚できる仕掛けをつくるなど、コミュニケーションの方法を模索しながら進めました。やってみないと何を不自由に感じているかが分からない。大変なことは多いけれど、対話を重ねるたびに発見がありました」(文さん)

稽古風景
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