歴代の人間国宝による秀作から、窯業地ならではの伝統を受け継いだ器、若手作家の意欲作まで、現代陶芸の今に焦点を当てた展覧会が兵庫陶芸美術館(丹波篠山市)で開かれている。分かりやすい解説シリーズで好評の「リモート・ミュージアム・トーク」の今回は、同館学芸員の村上ふみさんが担当。展示の見どころや作品の背景などについて3回にわたって教えてもらう。第2回は「日本伝統工芸展の受賞作」。
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兵庫陶芸美術館では、2023年11月26日(日)まで、特別展「未来へつなぐ陶芸―伝統工芸のチカラ」を開催しています。本展は、これまで日本の伝統工芸を牽引してきた日本工芸会陶芸部会の活動が昨年、50周年を迎えたことを記念した展覧会で、伝統陶芸のこれまでのあゆみと未来へとつなぐ技と美を、歴代の人間国宝の作品から新進作家らの最新作まで、137人の139作品によって紹介しています。全国を巡回し、当館が最終会場となります。ぜひお楽しみください。
作家は制作の中で、素材、装飾、焼成方法など様々な選択を行いながら独自性を追求し、新たな技術や技法を生み出しています。本展全体を見ていくと、多種多様な表現方法が存在し、そこには、それを体現する技があることが感じられます。本展には、日本伝統工芸展や各支部展、陶芸部会展の受賞作、入選作が多数出品されており、全国の作家の作品が一堂に会する貴重な機会となっています。
西端正の『丹波灰釉掛分陶筥(たんばかいゆうかけわけとうばこ)』は、鉄釉(てつゆう)と無釉(むゆう)の土肌を合わせ、炭化焼成によって渋みのある色調を作り上げています。掛け分けによる釉の連なりは、山並みを表現しています。端正に整えられた八角形のフォルムと落ち着いた色調が、存在感を際立たせる作品です。第36回日本伝統工芸展の日本工芸会総裁賞受賞作です。
市野元和の『丹波土部釉彩平鉢(たんばどべゆうさいひらはち)』。中央に赤褐色の赤土部釉(あかどべゆう)を施しています。器面のしっとりとした質感は還元焼成を2回行うことで得られたものです。赤土部は、近世丹波焼に見られる赤褐色に発色する塗土。丹波焼の伝統と作家の現代的な感覚が融合しています。第38回日本伝統工芸展の高松宮記念賞受賞作です。
井戸川豊『銀泥彩磁鉢(ぎんでいさいじはち)』は、底面の図柄だけでなく、全体の形や外周をめぐる線彫りもカイワレの形状から着想したといいます。モチーフの図案化と、それをとりまく絶妙な構成によって、温和な世界を作り上げています。第62回日本伝統工芸展の高松宮記念賞受賞作です。
(兵庫陶芸美術館学芸員・村上ふみ)
◆「日本工芸会陶芸部会50周年記念展 未来へつなぐ陶芸―伝統工芸のチカラ」
会場 兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4)
会期 2023年11月26日(日)まで
開館時間 10:00~18:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休館 月曜日
観覧料 一般1200円、大学生900円、高校生以下無料
電話 079-597-3961(代表)、FAX 079-597-3967
【兵庫陶芸美術館 HP】