群馬の鉄工所が手掛けた災害時などに対応できる“変幻自在のベンチ”がいま、注目を集めています。製作した思いやきっかけについて、関係者がラジオ番組で明かしました。
群馬県前橋市にある創業67年目の鉄工所、株式会社丸橋鉄工。同社は「スチール製品など鉄ものを製作し、自分たちの工場でお客さまにワンストップで届けている」というのは、常務取締役を務める丸橋雄太さん。体育館やイベント会場などでパイプ椅子などを収納する台車なども同社の主力製品の1つです。
そんな同社が、近年、世に送り出しているのが、「ベンチベッド」。3人掛けの背もたれ付きベンチはクッション性も有しつつ、その場でベッドに展開できたり、担架としても活用が可能。さらに、テーブルとしても使えるなど、1台で何役もこなせるといいます。10月に大阪の近鉄花園ラグビー場で行われた高校ラグビーOBが集う大会「マスターズ花園2023」でも活用されました。
丸橋さんいわく、この「ベンチベッド」を作る発端となったのは、東日本大震災。「当時、務めていた東京の巣鴨から大田区へ帰るため、山手線を半周ほど歩くことになったのですが、かなり距離があったため、避難所で先輩とともに一夜を過ごすことにしたんです」。そのときはパイプ椅子を並べて寝たという丸橋さんですが、当時の経験から、災害時に活用できるベンチの重要性を実感。ただし、実用化されているものを見つけることができず、「なら作ろう」と思い立ち、6年ほど前に製作に踏み切ったそうです。
社会に貢献したい、という強い思いから生み出された「ベンチベッド」。その開発に携わった丸橋さんは、かつて「正直、けっこう無力感があった。社会の中で自分に何ができるのだろうという思いが非常にあって……」と語ります。
それでも、必死に営業の仕事を続けてきたなか、「運良くいろんな方々の声を聞くことができた」ことで、徐々に活路を見いだすことに。「事業をするうえで人のためになり、必要とされる会社を目指さなくてはいけないな、と強く感じた」矢先に、今回の「ベンチベッド」のアイデアが「ポッとおりてきた」。
現在は各市町村の体育館や競技場などへの導入を進めている最中。今後は小学生でも気軽に持ち運びができるよう2人掛けタイプにして、それを2連結することでベッドを作ることにも取り組むなど、用途別に豊富なバリエーションの展開も目指しているそう。「10年後には重たい(パイプ)椅子がなくなっていればいいな」と、「ベンチベッド」の普及に向けて、丸橋さんは思いを語っていました。
また、丸橋さんは今後、同社が描く未来像について「ものづくりは非常に楽しい業種。ただ、ものづくりの日本の技術がどんどん衰退しているとも感じています。そこで、若い人がものづくりをもう一度楽しく目指せるような工場、会社にして、こういったこと(社会貢献できる製品づくり)をオープンに、会社の大小は関係なくできるようにしたい。工場をどんどん魅力ある環境に変えていきたいし、ひいてはこの『ベンチベッド』を誰もが使えるようになるところまで持っていきたい」と前を見据えていました。
※ラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』2023年11月6日放送回より
■番組でのリクエスト曲
優里『ベテルギウス』
「これを聴くと、泣きますね……。製品開発の過程で、皆さんの反応が思ったようなものではなかったり、いろいろとありました。でも、この曲、特に歌詞には非常に共感できて。頑張っていれば誰かが見てくれて、今回みたいにお話しする機会ができれば、頑張っていて良かったと思いますし、これからも頑張りたいなと思います」(丸橋さん)