――そこからクラシックにのめり込んでいったんですね。
弾いたら、面白かった。音楽が素晴らしかった。(広瀬が)ミュージシャンだから言うと、モーツァルトって全部、協和音やし、僕らから言うと変な音がない。
――ははは。
ないでしょう? ところがね、最初の提示部があって、展開部があって、再現部があって、また最後に同じメロディが出てきたと思ったら、そこでものすごい転調して戻ってくる。これ(曲が作られたのは)300年前の話ですからね。それを弾いたときに涙が出てきてもうて。「なんや、考えていること俺らと変わらへんやん」とシンパシーを感じた。やり方の上品さに心を奪われました。そして譜面を一切いじらないで演奏した。そうしたら、指揮者に「小曽根君のモーツァルトは面白い」と言われて、その後あちこちの楽団に呼ばれるようになった。挙げ句の果てにはその2年後、ワルシャワ交響楽団でモーツァルトを弾かせてもらいました。そこから1年に1曲ずつコンチェルト(協奏曲)を覚えると決めて、これまで20曲くらい覚えた。普通は年齢とともに指が回らなくなるが、クラシックのおかげでトシとともにピアノが上手になってきました(笑)。
▽いけるところまで悪あがきしたい
――抱えておられるプロジェクトはほかにもある。「From OZONE till Dawn」(小曽根が次世代の音楽家たちと共演、発信の場を提供するプロジェクト)とか。
本当に幸せだと思うのは、音楽家たちとの出会いです。若い人たちと一緒にやることはすごく刺激になる。同じ曲をやっても、聴いてきたものが違うから、出てくる“言語”が違う。だからtill Dawnは彼らにそういう場所を提供していると言っているけど、僕の方がもろうてるもんが大きいと思う。実は今回、ニューヨークで新しくトリオを作ってアルバムも作りました。このトリオで日本でも演奏したいと思っています。もうすぐ63歳、あとどれだけ現役でバリバリ弾けるかなと考えた時に、もう一度、ニューヨークに戻ろうかなと考えていて。来年末までに。
――ニューヨークに住むのですか?
うん。ニューヨークで刺激をもらいたい。僕がプレーヤーとしてはっとさせられるような、お尻をひっぱたかれるような環境に身を置いて、いけるところまで悪あがきしてみようかなと。人生最終楽章やから(笑)。
――30年前も一緒のこと言っておられた気がします。「もっともっと」「俺は120歳くらいまで生きる」言うて。
(笑いながら)120まで生きたくないけど、若いミュージシャンが後ろから「こんなんもあるで」と出してきてくれるから、僕も頑張らなと思うし、勇気をもらえます。
――これからの小曽根さんが楽しみです。今日は本当にありがとうございました。
◆舞台「ある都市の死」
日時 2023年12月12日(火)午後7時、13日(水)午後2時と午後6時30分開演
場所 サンケイホールブリーゼ(〒530-0001 大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー7階)
チケット 全席指定11,000円(税込)
問い合わせ キョードーインフォメーション0570-200-888