そして、「千里丘陵の万博跡地は閉幕後に森として整備されたが、樹木の土被り(地面より下の部分)が70センチと根が浅く、大きくなった木が風で倒れやすくなるため、間伐(※)される予定だという話を聞いていた。それならば、この森を再生させるための間伐によって、“いのち”のリレーのように大阪・関西万博の会場、夢洲へ引き継ぐことができたら」と話した。
忽那氏は海に囲まれた人工島・夢洲(ゆめしま)ならではの、海に見立てた風景をデザインした。森は瀬戸内海という大きな海をモチーフにしている。
「(交易の拠点として) 瀬戸内海から様々な文化が伝わり、大阪城から西(海側)に向かって街が形づくられてきた、その接点にある最先端の場所が夢洲だと思う」。
会場を“ひとつの皿”と見立てる忽那氏は、そこに盛り付ける料理が美しく見えるようにとの思いで、森は瀬戸内海のしまなみを表現したという。
そして「屋根リングと静けさの森とは一蓮托生のような関係だ。動(最先端のテクノロジーを伝えるパビリオン)と静(静けさの森)の空間の違いを見てもらいたい」と話す。
植樹が始まり「世界の万博で一番樹木が多い。自然と調和したパビリオンも並ぶ。木陰で人とともに美しく見える風景を作りたい」と気持ちを新たにした。
樹木は冬に植えるのが望ましい。いったん4~5月まで植え込みを続け、また寒くなる秋口に再開するという。新芽が出てくるようになると、水分の蒸発散量が増加するので、いくら根回しをしても枯れてしまう。この調節が造園の難しさだという。
移植した樹木については万博閉幕後、移設や再利用の可能性もあり、若手建築家などの意見も聞きながら「ポスト万博」のあり方を検討している。忽那氏は「一部を現地保存できれば」と本音もちらつかせた。
※他の木の成長を阻害しないよう樹木を「間引き」すること 過密となった林内密度を調整する