【池澤さん】 1983年、3代目が発売される際に初めて日本独自の「人生ゲーム」が作られました。職業には、当時日本でも憧れが多かった「デザイナー」「パイロット」「アイドル」などが並び、「お歳暮」「正月休み」など日本の文化を反映したマスが盛り込まれるようになりました。
1989年以降は、世相をより色濃く反映した大人向けの「平成版」を毎年発売。毎年40万個を売り上げる大ヒットシリーズとなりました。「晴海でコンパニオンギャルをナンパ」「成田離婚」「徳川埋蔵金さがしに血道を上げるが何も出てこず」など、その年に流行った言葉や現象をユーモラスに描いており、これ以降の「人生ゲーム」は発売時期の時流やトレンドが反映されることが多くなっていきました。
―――なかには、変わった進化を遂げたものもあるのでしょうか?
【池澤さん】 ありがたいことに、これまでの長い歴史のなかでさまざまな企業や著名人とコラボさせていただく機会が多々ありました。関西地方にゆかりのあるコラボとしては、1989年に、今年38年ぶりの日本一で話題となったプロ野球・阪神タイガースとのコラボ版を発売しました。当時も熱烈だったタイガース人気を受けて、「日本一の阪神ファンを目指す」といった内容でした。
日清食品株式会社さんとは、ともに50周年を迎えるタイミングで「出前一丁」とコラボをした「出前一丁人生ゲーム」を作ったことも。ほかに大きな話題を呼んだものとしては、超大物アーティストとして知られるB’zさんからお話をいただき、デビュー30周年を記念した「B’z人生ゲーム」を一緒に作らせていただいたこともありました。
2008年には、電子マネーの普及を受けて紙のお金を一切なくし、ICルーレットとキャッシュカードを導入した「人生ゲーム」を発売しました。お金を電子化し計算も自動で行ってくれるという、いわゆる“銀行役”が不要なバージョンだったのですが、実はあまり売れなかったんです……(笑)。電子化が進む時代だからこそ、「人生ゲーム」では実際のお金やルーレットの手触り、お札がたまっていく感覚を楽しんでいただいているのだと実感しました。
☆☆☆☆☆
発売から半世紀が経つ現在も、変わらず老若男女に愛され続ける「人生ゲーム」。長い歴史のなか、その時代に生きた人々の“人生”を体現する形でさまざまな進化を遂げてきたことがわかりました。
池澤さんいわく、「職業カードでは、その時代ごとの子どもたちにとって特に憧れの強い職業を多く選んでいます」とのこと。年末年始実家に帰省した際には、自宅にある「人生ゲーム」がいつの時代のものか「職業カード」を見て確かめてみるのもおもしろいかもしれません。
※ラジオ関西『Clip』2023年12月14日放送回より
(取材・文=藤田慶仁)