いま、世界中で問題となっている水不足。実は、日本国内にも渇水状態になっている地域が多いということは意外と知られていません。そんな問題を解決するために提唱されているのが、消費量よりも多くの水を供給することを意味する「ウォーターポジティブ」という考え方です。
私たちが毎日飲んでいる水は、自然に降った雨や雪が森の土に染み込み、地下深くで磨きあげられることで生まれます。その工程には約20年もの年月が必要とされることから、水がいかに限られた資源であるかがわかります。つまり、ただ消費するだけでなく、“生み出される量”が“飲む量”を上回る必要があるということです。
そこで近年、水の枯渇を防ぐためのものとして「ウォーターポジティブ」が注目を浴びるようになりました。この取り組みを積極的に遂行している企業の一つが、「サントリー天然水」でも知られるサントリーグループ(以下、サントリー)です。
同社は「100年先の未来の水を育む」ことを掲げており、20年以上も前から「水を育む森」の手入れに力を注いでいるといいます。全国22か所、総面積1万2000ヘクタールにも及ぶ森林を「天然水の森」として整備。各分野の第一人者とともに、水源地となる森の保全・再生活動を手がけているほか、これまでに延べ8000人以上の社員が実際に森へと足を運び、森林整備を行ってきました。こうした取り組みは、取水量の2倍以上の水を森に還すことにつながっているのだそうです。
また同社は、これらを一時的でなく50年、100年先の未来にも水をつないでいくためのものと位置付けています。そこで、次世代に、人々の生活にとっての水資源の大切さを伝える環境教育も実施しています。
たとえば、親子で参加可能な「森と水の学校」や、学校単位で参加できる「出張授業」といったさまざまなカリキュラムがあります。いずれも、自然の素晴らしさを感じることで、子どもたち自身に“未来に水をつないでいくために何ができるか”を考えてもらうことが目的です。
普段なにげなく手にしているペットボトルの水。それらが一体どのように生まれ、どのようにして人々のもとへと届けられているのか、そして、なぜ水不足が世界中で問題となっているのか、その理由や解決策を知る……“水の未来”について考えることは、“私たちの未来”につながるのかもしれません。
(取材・文=丸安なつみ)