西宮市の石井登志郎(いしい・としろう)市長が、20日、ラジオ関西の生番組に出演し、「文教住宅都市として栄えた背景には、海、山、川の豊かな自然を守ってきた歴史がある。魅力を維持し、さらに高めていくために、市政をバージョンアップしたい」と、市政への思いを語った。
西宮市は、大阪市と神戸市のほぼ中間地点にあり、人口約50万人の中核市。海、山、川の豊かな自然にも恵まれ、住宅都市として発展してきた。その背景にあるのが、60年前、1963(昭和38)年の「文教住宅都市宣言」。石井市長は「高度経済成長期の石油コンビナート誘致運動に市民が反対し、西宮には浜を残すんだと体を張って止めた。その熱い思いが今につながる」と話した。また、灘五郷のうち「西宮郷」「今津郷」の2つの地域を擁し、酒造りに重要な「宮水」が湧き出した地としても知られる。西宮市では、全国でも珍しい「宮水保全条例」が制定され、対象地域で一定規模以上のマンション建設や宅地造成を行う際には、届出や事前協議などが必要となる。石井市長は「きれいな水があるからこそ、まちが栄えた。この自然を残していくという思いが、脈々と受け継がれている」と紹介した。
市の魅力について、石井市長は、まず「夙川の桜」を挙げた。桜並木には松も植えられていることから「以前水害があった時に、他の川より比較的被害が大きくならなかった。単に景観だけでなく、市民の生活を守るためにもポジティブに作用している」と話した。また、「西宮ヨットハーバー」は西日本最大規模。「自然体験が都会に近いところでできるのも魅力」とした。毎年、1月9日、10日、11日には、全国のえべっさんの総本社である「西宮神社」で十日戎が行われる。10日の早朝には開門神事として「福男選び」が行われるのも全国的に有名だ。市の南部だけでなく、北部にも見どころがある。山口町では有馬川沿いにホタルが乱舞し、名塩の手漉き和紙「名塩和紙」は、二条城の復元にも使われるほど高品質。名塩は江戸末期の蘭学者・緒方洪庵の妻、八重の出身地でもあり「蘭学の道」がある。石井市長は「こうした西宮の全ての魅力を、市民にも伝えきれていないのが反省」と語り、「市政ニュースで魅力を紹介する俳句を書いている。市民に知ってもらい、まち歩きなどに繋がれば」と話した。
ことし盛り上がったのが阪神甲子園球場。5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが2類から5類に移行したことから、高校野球の声出し応援が解禁に。そして、プロ野球の阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を甲子園球場で決めた。38年ぶりの日本一の瞬間には、甲子園球場でもバブリックビューイングが行われ、歓声が上がった。実は、市内の小中学生は、その甲子園球場の土を踏むことができる。西宮市立の小学6年生が参加する「小学校連合体育大会」と、市立中学生の「中学校連合体育大会」が、毎年甲子園球場で行われている。石井市長は「学校対抗リレーなど、甲子園のフィールドで行う様子は壮観」と話した。また、2020(令和2)年から、「二十歳のつどい(旧成人式)」を甲子園球場で開催している。石井市長は「西宮のバリュー(値打ち)でもある」と胸を張った。
西宮市が抱える課題は、ふるさと納税による市税の流出。今年度は31億円が流出している。石井市長は「ふるさと納税返礼品のキラーコンテンツ(強い影響力のある商品)は、肉、魚介類、果物、米。それらが豊富ではない西宮市は同じ土俵で勝負できない。今あるものをPRするのと同時に、西宮ならではの、体験型の返礼品を打ち出していかないといけない」と話した。番組内では「酒蔵びらきした時の最初の一滴を飲める権利は?」「杜氏と一緒に酒樽をかき回せる権利は?」など、アイデアを挙げ、「楽しいと思ってもらえる、西宮ならではの体験型返礼品を打ち出し、挽回したい」と語った。同時に「特に都市部では限界がある。国にも適切な運用をしていただきたい」と要望した。