監督は『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』で知られるドイツのヴィム・ヴェンダースです。主人公の平山を役所広司が演じ、カンヌ国際映画祭・最優秀男優賞に輝きました。
トイレ清掃員の日常の様子を追う映像がずっと続くのですが、観客はなぜかスクリーンに惹き込まれていきます。セリフは極端に少なく、役所はほんの少しの喜びや、微妙に悲しい顔、ちょっと戸惑ったニュアンスなどを絶妙な表情で演じ分けています。
トイレを次々ときれいにする役所の手さばきは驚きです。役所は、役作りで指導に当たった清掃員に「明日から働いてほしい」と言われるほど、作業の段取りを練習で身につけました。ヴェンダース監督は「役所広司は平山そのものになった。監督をする者にとって最高の俳優である」と称えています。カンヌで役所の受賞が発表されたとき、ヴェンダース監督は顔をおさえて泣いていたそうです。
10月に行われたニューヨーク映画祭のプレミア上映で役所は、今作の撮影がドキュメンタリーのようだった、と明かしています。
「ほとんどテストがなく、本番だけを繰り返して撮っていたので、まるでそこで本当に生活をしているような撮影でした。もう二度と訪れない、今のこの瞬間瞬間を大切に生きるという風に心がけて演じました」（役所）
毎日同じことを繰り返すような平山の暮らしを見つめる観客は途中で、平山がとても贅沢な時間を過ごしていることに気づくでしょう。木々の葉が風にゆれたときに光と影がゆらぐ“木漏れ日”と主人公の人生が重なり、穏やかさが心にしみます。映画『PERFECT DAYS』は、全国ロードショー公開中です。（SJ）
【予告映像】
◇映画『PERFECT DAYS』
※上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。
出演：
役所広司 柄本時生 中野有紗 アオイヤマダ 麻生祐未 石川さゆり 田中泯 三浦友和
監督：ヴィム・ヴェンダース
脚本：ヴィム・ヴェンダース 高崎卓馬
配給：ビターズ・エンド
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