平安時代、弘法大師・空海が「雨乞いの祈祷」を行ったとされる真言宗寺院・神泉苑(しんせんえん 京都市中京区)に、京友禅作家・足立茂氏が奉納した辰年の絵馬がお目見えした。
絵馬には金色で描かれた龍が、宝船とともに力強く水上を泳ぐようすが描かれ、境内の「善女竜王社(ぜんにょりゅうおうしゃ)」手前の拝殿に設置されている。
神泉苑は、794(延暦13)年に桓武天皇により禁苑(きんえん / 宮中の庭園)として造営された。 平安京(大内裏)の南東隣に位置し、疫病退散を願い始まった祇園祭のルーツ「御霊会(ごりょうえ)」も開かれた。空海が祈雨(雨乞い)を行ったのは824(天長元)年。来年(2024年)はそれから1200年に当たり、同じく『甲辰(きのえたつ)』に当たる。
当時は日本中で日照りが続き、 穀物や野山の草木もみな枯れ果てた。
空海は淳和天皇の勅命で、神泉苑の池畔で8人の弟子とともに雨乞いの祈祷をすると、北インド(チベットあたりか)から勧請(かんじょう/ 呼び寄せる)した善女龍王が現れて三日三晩雨を降らせたとの伝説がある。説話集「今昔物語集」の巻十四にも記されている。
これ以降、神泉苑の池には善女龍王が住むとされ、神と仏とを調和させ、同一視する”神仏習合”の色合いが残っている。
アメリカ・カリフォルニアから57年ぶりに京都を訪れた女性は、息子と孫を連れて都会の中にある神泉苑の静寂な雰囲気にひたっていた。