大阪・関西万博開催に向けて展開されている『ひょうごフィールドパビリオン』では、兵庫県内各地でおこなわれている持続可能な取り組みを、地域の人たち自らが発信。実際に活動現場(フィールド)を訪れ、見て、学んで、体験できるプログラムを多数展開しています。その一環として実施されているのが、神戸の真珠産業とSDGsについて学べるプログラムです。
同プログラムを実施するのは、「パールコネクション(合同会社Pearl Connection)」。6人の女性が集まり、日本が誇る真珠産業や文化の発信力を高めたいという思いから2023年1月に設立しました。代表の渡邉美世さんは、真珠加工体験や、真珠とSDGsのつながりを知ってもらい、より一層真珠を身近に感じてもらいたいと話します。
真珠加工体験では、ピンバッチやブローチ、ピアス、ペンダントなどが手作りできます。生き物である真珠貝によって育まれる真珠は、よく見ると一粒一粒が個性豊かで唯一無二。まずは、自分の目で真珠を選ぶところからスタート。真珠を接着する土台などのパーツを選び、機械を使って真珠に穴を開けて自分だけのアクセサリーが完成します。日本の伝統工芸である金箔や銀箔を真珠に貼り、イヤリングやネックレスに仕上げる体験も人気があるそうです。
同プログラムのミニセミナーでは、真珠とSDGsのつながりを紹介。真珠は海の中で何年もかかって養殖業者に大切に育てられるそうですが、取り出された真珠はそのまま宝石になるわけではありません。宝石として磨き上げる必要があります。
実は、真珠加工の高い技術力を誇る・神戸市。世界的にも信頼と評価を得ていて、日本のみならず世界から多くの真珠が集まり、選別と加工が行われています。渡邉さんによると、神戸は「真珠の街・神戸」「パールシティー神戸」とも呼ばれ、養殖された真珠を磨き上げて、穴開けやしみ抜き、研磨、染色などの加工を施し、世界へ送り出す真珠の集まる場所として機能しているといいます。
ただその一方で、真珠は海で育つ生き物ゆえに、その環境に大きく左右されるのも事実。近年では稚貝の大量斃死という問題も起こり、現在は真珠不足や担い手も減少傾向が続いているのだとか。同プログラムでは、SDGsと真珠の関係について知ってもらうことで、環境と真珠産業へ興味をもつきっかけになれば、と話します。
SDGsの取り組みの一つとして、「廃核アート」という作品も。真珠は母貝の中に丸い核を入れて、その核のまわりに時間をかけて真珠の層ができることで生まれます。その核に、割れやシミのあるものは廃棄されてしまいます。この廃棄される核を使って、新たな価値を生み出すのが「廃核アート」です。アート作品を作る教育プログラムや、同じく兵庫県の地場産業である播州織のハギレを使ったアップサイクルなど、廃核処理によるCo2を減らし、製核業者の支援にもつながっているといいます。
「パールコネクション」を立ち上げた6人の女性は、実はそれぞれが専門職を持っています。その経歴は、真珠アカデミーを主宰する真珠業者、全国通訳案内士、司会&ライター、人気ライバー、元国際線の客室乗務員で人材育成講師、とバラエティーに富んでいます。そして6人全員が、真珠の講師資格等を持つスペシャリストでもあります。それぞれの分野での経験を活かして、ステークホルダーとして真珠の魅力を発信しています。
真珠加工は神戸市の地場産業でもあり 、特に日本の「アコヤ真珠」は世界に誇るもののひとつです。同プログラムを通じて真珠が生まれる背景を知り、日本の良さや環境の大切さ、職人の技術力の高さと共に真珠の価値を再認識してもらえたら嬉しいと、渡邉さんは思いを語ってくれました。
(取材・文=市岡千枝)
◆お問い合わせ:合同会社Pearl Connection