子どもから大人まで、誰もが一度は聞いたことのある昔ばなし『一寸法師』。日本人にとって馴染みの深い話ですが、その舞台が大阪だということはあまり知られていません。特に、住吉大社と深いつながりがあることを知っていましたか?
物語と神社の関係について、住吉大社の権禰宜・武田昌也さんに聞きました。
一寸法師は、室町時代後期から江戸時代初期にかけて成立したといわれている物語集『御伽草子』に出てくる昔ばなしです。津の難波(なにわ)の里に住んでいた老夫婦は、神様に祈願し、念願の子どもを授かります。しかし、その子が1寸(約3.3センチ)しかなかったため夫婦は一寸法師と名付けました。この冒頭に出てくる「津の難波の里」は現在の大阪府北西部と兵庫県南東部を占める旧国名を指す「摂津国」のことであり、老夫婦が子どもを授かるために祈願した神社こそ住吉大社なのです。
13歳になった一寸法師は志を立て、腰には針の剣を差し、お椀の船に乗り箸をオール代わりにして京へ上ります。
この京を目指して出発した場所が、当時は海だった住吉大社付近の「住吉の浦」だそうです。現在でも住吉大社の近くには、当時海岸だった場所の近くに設置されていた「住吉高灯籠」を移築したものが残っています。
物語では一寸法師が立身出世を果たし、お姫様と幸せに暮らしたと締めくくられます。これらの伝承から住吉大社は「子宝の神」「安産の神」「立身出世の神」として今も信仰が続いているそうです。現在、住吉大社の境内にある資金調達・子宝・知恵を授ける神が祀られる「種貸社」の手水舎にはお椀に乗った一寸法師の像があります。また大きなお椀のオブジェや顔出しパネルが設置されており、フォトスポットとして人気だそうです。
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自分が住んでいる地域のことを知っているつもりでも、意外と知らないことがたくさんあります。神社や史跡を訪れた際には、その土地にまつわる物語に着目してみるとおもしろい発見をするかもしれません。
(取材・文=迫田ヒロミ)