Xにて「幼児語、まじで嫌い。子供に後で恥をかかせるために大人がグルになって一般的でない言葉を覚えさせてるとしか思えない、悪質すぎる。百害あって一利ないだろ」というポストが話題となりました。クルマは「ブーブー」、犬は「ワンワン」のように主に擬音に置き換えて幼児にわかりやすく伝えるものを幼児語と呼びますが、本当にこのポストのように“百害あって一利なし”なのでしょうか。乳幼児期の子どもの発達について研究する立命館大学・総合心理学部の矢藤優子教授に話を聞きました。
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矢藤教授は幼児語について「乳幼児とのコミュニケーションを取るための手段であり、成長のためにも必要なことと言える」と説明します。
「乳幼児に『食事』と発音させてようとしても難しいですが、『マンマ』なら発音が可能です。このように、乳幼児でも発音できる言葉に言い換えて教えることで、互いにコミュニケーションをとることを可能とします。幼児語はコミュニケーションを一方的にせず、一緒に楽しむための手段となるのです」(矢藤教授)
また、Xのポストでは「幼児語から普通の言葉を覚え直すことは、子どもにとって二度手間である」との指摘も。これについて矢藤教授は以下のように解説。
「人は『マンマ→ご飯』のような変換だけでなく、成長の過程で『ご飯→食事・夕食』のように語彙を増やしたりアップデートすることを無意識のうちにこなしていきます。“二度手間”と考える人はほぼいないのではないでしょうか。二度手間だから……という理由で幼児語を使わない、ということにほとんど意味はありません」(矢藤教授)
とはいえ、幼児語を使う上で注意すべきこともあるそう。それは「子どもの未熟な発音に付き合わないこと」矢藤教授。
「例えば子どもが『おさかな』を『おちゃかな』と発音するのに合わせて、大人も『おちゃかな』と発音することは間違った言葉を覚えてしまうきっかけになります。また、発音を無理に正そうとするのもよろしくない。子どもが発音に自信を無くし、喋らなくなってしまう可能性があるためです。例えば『おちゃかなはどこ?』という質問があった場合には、『おさかなはここだよ』くらいのコミュニケーションが良いでしょう」(矢藤教授)
Xでは「幼児語を使わないようにしていたら子どもの発語がかなり遅れた」と報告するポストも。
「成長には個人差があります。幼児語を使うことが成長を早め、使わないことが遅くする……ということは一概には言えません。また、意味を理解できていれば発語が他の子と比べて遅くても気にし過ぎる必要もありません。大切なのは子どもとのコミュニケーションを楽しむことです」(矢藤教授)
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矢藤教授によると、大人が乳幼児と話す時に、意識をしなくても幼児語を使ったり声のトーンが高くなったりするのは乳幼児とコミュニケーションをとりやすいよう、人間に生得的に備わったものであるとのこと。無理に大人と同じように話しかけようとせず、幼児には幼児語を使っていて問題ないようです。