新学期が始まり、各地で入学式が行われています。小学校の新1年生が真新しいランドセルを背負って当校する様子はなんともほほえましいものがありますよね。
昔からランドセルは「男の子が黒」「女の子は赤」というイメージがありますが、いまやそのセオリーも変化しているそう。ランドセルの製造・販売を行う『株式会社セイバン』の広報担当・松井満和子さんに最新事情を聞きました。
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「そもそも牛革ランドセルが使われるようになったのは、明治10年頃。それまでは、布製やブリキなどの金属製カバンが主流でした。当時、牛皮革の染色は難易度が高く、綺麗に染めることができる色が黒と赤だったことから“ランドセルの定番色”として定着しました。時代が進むにつれて染色技術や化学素材が進化し、牛革でも様々な色に染めることができるように。2000年頃には人工皮革が主流となったことで、カラフルな色を出せるようになったのです」(松井さん)
2024年2月に行われた同社の調査では、現在でも黒を選ぶ男の子が多い一方、女の子で赤を選ぶ割合はかなり少なくなっていて全体の8%という結果に。女の子はパープル系26%、ピンク系24%、ブルー系19%と様々な色が人気となっており、学校指定で赤となっている場合でも花柄などのデザイン入りのものが選ばれる傾向にあるそうです。
男の子の間ではブラック系が67%と、現在でも多くの支持を集めています。近年は赤や青のステッチが入っているものが人気だそう。黒を選ぶ子どものうち青のステッチが入ったものが39%、赤のステッチ入りは19%となっているそうです。青色の人気も高まっており、ブルーとネイビーは合わせて18%と徐々に選ばれるようになってきているとのこと。
「男の子は黒・女の子は赤……といった性別による色分けが無くなってきており、ランドセルにも多様性が見られる傾向です」(松井さん)
色だけでなく大きさも変化しています。『ランドセル工業会』によると、2009年頃はA4クリアファイル対応サイズ(横幅22センチメートル)が主流でしたが、2011年に教科書のサイズが拡張されたことでランドセルのサイズも変化。A4フラットファイルサイズ(横幅23センチメートル)が既定のサイズとなったそうです。
ランドセルの軽量化も特筆すべきポイント。従来の牛革製が1500グラムあったのに対し、人工皮革を使用したものは1200グラム。セイバンが取り扱うランドセルの中で最軽量のものは、なんと約890グラムです。「最近ではGIGAスクール構想により授業でタブレットなどのデジタル機器を使うことが増え、ランドセルに格納する教材の総重量が昔とくらべて重たくなっています。子どもたちが背負う荷物の重量がどんどん上がることで、より軽いランドセルが求められています」と松井さん。
このような時代背景に合わせて、従来の“ヘリ”がある学習院型に加え、2020年頃には“ヘリなし”タイプのランドセルが登場。「キューブ型」と呼ばれ軽さが特徴です。現在、主流は学習院型とキューブ型なのだそう。
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技術の進歩と時代の変化によって進化してきたランドセル。様々な色や形がありますが、子どもの負担軽減を目的とした「ランドセル選び」も大事なのかもしれません。
(取材・文=迫田ヒロミ)