視覚認知機能を“見える化“する特許技術 「老化に逆らう未来目指す」 脳鍛えるVRゲーム | ラジトピ ラジオ関西トピックス

視覚認知機能を“見える化“する特許技術 「老化に逆らう未来目指す」 脳鍛えるVRゲーム

LINEで送る

この記事の写真を見る(5枚)

――脳の老化は、何歳ごろから始まるのでしょうか。

【落合さん】 私たちが計測したデータでは、60〜65歳くらいから急激に老化が進む人が多いようです。実は、能力の悪化を知ることはとても大切なんです。データや数値に表れると、やっぱりわかりやすいですよね。まずは、「自分はここが弱くなっている」ということをわかりやすくすることこそが、いま私たちが取り組んでいることです。なかでも特に力を入れているのが、交通事故に関してです。

――同社では、データを数値化する特許技術を持っているのですよね?

【落合さん】 そうです。これまで、空間認知や物体認知を簡単に計測する方法はなかったわけです。しかし、空間認知であればVRゲームを使って5分ほどで計測できます。150点満点で点数を出すのですが、平均が75点になるように設定しており、平均値とどれくらいの差があるのかがわかるようになっています。ただし、年齢によって平均値は変わってくるため、同年代のなかで平均より高いのか、低いのかがわかるようになっています。

VRを用いた視覚認知能力の測定・評価を行うゲーム「KEEP」
VRを用いた視覚認知能力の測定・評価を行うゲーム「KEEP」
VR上の雪原を走るシロクマを追いかける
VR上の雪原を走るシロクマを追いかける

(数値が)悪いとか良いとかではなく、「自分はここが弱い」ということを意識する。自分だけでなく周囲も意識することで弱い部分をしっかり鍛えて、交通事故など、何かが起こることを防いでいこうという活動をしています。

間違った捉えられ方として、「計測で空間認知能力が悪い人を見つけて、運転免許を取り上げたらいいよね」とよく言われます。しかし、私たちにそういうつもりはありません。先ほども説明した通り、空間認知は使わないと衰えてしまうものです。衰えると、運転どころか、転倒しやすくなったり、寝たきりになりやすくなったりする。単純に「能力が衰えていたから免許を返納しろ」というのではなく、「交通事故を起こさずに長く運転し続けるにはどうすればいいのか」を考えています。

――神戸で行っている実証実験では、どんなことに取り組んでいるのですか?

【落合さん】 技術の、スポーツ利用の可能性を調べています。スポーツをするうえで、空間認知はすごく大事だといわれていますが、測る方法も鍛える方法もあまりないのが現状です。 ボールをキャッチする訓練を行っても、現実では自由落下しているボールを取ることしかできません。しかしVRを使えば、スピードもボールの数も、重力さえも簡単に調節して訓練することができます。

ほかの政令指定都市に比べて、神戸は民間のスポーツ施設を利用する割合がとても高い。それはつまり、お金を払ってでもそのスポーツがうまくなりたいという人が多いということなのではと考え、神戸で実験を行っています。

――この特許技術で、どんな未来を目指していますか?

【落合さん】 交通事故がゼロになったらいい。現在は、視覚認知を“見える化”していますが、同じようにいろいろな脳の能力を“見える化”することができるようになると、「なりたい自分」になりやすくなるのではと思っていて。脳の能力そのものを“見える化”することが最終的なゴールではありますが、私たちが生きている間に実現するのは無理だろうとは思っています。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 視覚認知機能を“見える化“する技術で、自分の能力を知るだけでなく能力を鍛えることにまで目を向けて、よりよい未来への波を起こそうとする。落合さんは、「私たちが行っている、自分に足りないものを客観的に“見える化”することは、自分の能力・可能性をのばすことだと思っています。皆さんがチャレンジし続けることができたら、世の中がもっと楽しく明るくなるのではと思います」と話しました。

※ラジオ関西『Clip 木曜日』2024年4月4日放送回より


LINEで送る

関連記事