女子サッカー・WEリーグの2023-24シーズンは、25日に行われた第22節をもって、全日程が終了。INAC神戸レオネッサは大宮アルディージャVENTUSとのアウェイ戦を2-0と下し、勝利で締めくくりました。元なでしこジャパンDFの川上直子氏がこの一戦について、自らがパーソナリティーを務めるラジオ番組で振り返りました。
第20節終了時点で、三菱重工浦和レッズレディースの2連覇が決まったWEリーグ。INAC神戸は前節、浦和Lに敗れるなど、終盤に来て連敗。そのなかで最終節に臨みました。なでしこジャパン(日本女子代表)DF守屋都弥選手が今シーズン初めて欠場した試合でしたが、FW愛川陽菜選手とFW田中美南選手が前半にそれぞれゴールを決めれば、守備陣も最後まで集中を切らさず。今シーズン13度目のクリーンシートを達成し、有終の美を飾りました。
元なでしこジャパンの大宮V・DF鮫島彩選手の現役ラストゲームとなったこの試合。終了後にはピッチで、かつてINAC神戸でともにプレーしたFW高瀬愛実選手(※「高」=はしごだか)が涙を流し、その高瀬選手の肩に鮫島選手が手をのせる場面も。2人は代表やINAC神戸で切磋琢磨してきた間柄ということもあり、女子サッカーファンにとっても感慨深いシーンとなりました。
今節のINAC神戸について、先制点を決めた愛川選手ですが、シーズン途中の試合で途中出場時に途中交代を経験するなど、悔しさも味わった1年に。それでも、シーズン締めくくりの試合で芸術的なロングシュートを決めるなど、20歳のアタッカーは昨シーズンを上回る成績(21試合出場4得点)を残しました。
川上氏は愛川選手について、「いいときもありつつ、『あれっ、今日全然ダメ……』というときもあったが、それでもチャンスをもらったなか、『チャンスをつかむんだ』という前向きな姿勢が、最後結果として出たのはよかった。若いので、これからINACを背負っていかなければいけない選手。しんどいこともまだまだあると思うが、伸びしろがたくさんある選手。応援している」とコメントしていました。
また、この試合でもゴールを決めた田中選手については、「得点王を狙っていたなか、そこには届かなかったが、INACのエースとしての活躍は今シーズンも十分に発揮し、(観る側も)楽しませてもらった」と、キャプテンとして大車輪の活躍を見せた背番号9をねぎらっていました。
2023-24シーズンのINAC神戸は、スペイン人のジョルディ・フェロン監督の指揮のもと、WEリーグカップでグループリーグ敗退(2勝3敗、グループBの5位)、皇后杯で優勝、WEリーグで2位(15勝4分け3敗、勝点49)という成績でした。
クラブ初のスペイン人監督ということで、川上氏は、当初、INAC神戸のサッカーにおいて、チーム内の意思疎通に不安を感じていたといいます。
「外国人監督になって一つ心配だった点は、選手に『こうしよう』と指示を与えたとき、いったん通訳さんが入るので、今までの間(ま)と変わってくること。(監督が)伝えて、(通訳が)もう1個伝えてとなり、選手も通訳が入ると『えっ?』と、(意図が)わかりにくいなと思うことがある。練習のテンポが今までと違ってくるので、集中の仕方が難しくなるのかなというのがあった。また、わからないことがあったとき、『監督、いまのはこうですか?』と聞いたら、今まではすぐ(答えが)返ってきたものが、通訳さんを介さないといけない。そうなると、そういうところに慣れるまでは大変だったかと思う」
リーグカップ戦やリーグ序盤戦では勝ち切れない試合が多かったINAC神戸。それでも、徐々にジョルディ監督のサッカーがフィットし、皇后杯7季ぶりの栄冠につながりました。
なかでも、川上氏は、スペインリーグでのプレー経験を持つMF山本摩也選手の存在に言及。「山本選手はスペイン語ができるので、通訳が2人いるような感じ。彼女の存在はすごく大きかったのではと、勝手に思っている」と、川上氏はピッチ内でコミュニケーションをとれる選手の貴重さも述べていました。なお、INAC神戸は23日に、ジョルディ・フェロン監督との契約を更新したことを発表しています。
※ラジオ関西『カンピオーネ!レオネッサ!!』2024年5月27日放送回より