安倍晋三元首相(当時67歳)が奈良市・近鉄大和西大寺駅前での街頭演説中に銃撃され死亡した事件は8日、発生から2年を迎えた。駅前近くの広場には献花台が設置され、多くの人々が追悼に訪れた。
献花台を設けた自民党奈良県連によると、7~8日の両日で計約3000人が訪れたという。
兵庫県三田市の50代女性は「安倍さん亡き後の政治家には、もっと緊張感を持ってほしいと言いたい。(特に自民党の派閥裏金問題を考えると)有権者ありきの政治ではない」と苦言を呈した。
大阪市都島区の20代男性は、大学院で政治学を専攻している。「(7日に投開票が行われた)東京都知事選挙では、街頭演説も多くの人々を集めたが、選挙妨害も激しかった。こうした中、SNSを駆使した有権者へのアピールは影響が大きかったと思う。安倍元首相をこの場所で撃った男性被告の動機はともかく、どうして事件を防げなかったのかと思う。もちろんこの教訓を生かしてほしいが、選挙活動を含め政治家の街頭演説のあり方が変わる時期に来ているのではないか」と話した。
銃犯罪率が世界でも極めて低いとされる日本で、安倍元首相の銃撃事件は世間に大きな衝撃を与えた。 これまでにも政治家が銃や刃物で狙われた事件は数多くあった。しかし多くの国民は「安全な日本でこんなことが起きるのか」「警備体制はどうだったのか」との疑念を抱いた。
昨年のこの日、大和西大寺駅前で銃を模した筒状の物体を掲げた男が現場近くで取り押さえられ、現行犯逮捕された。こうしたことから、今年は自民党奈良県連が奈良市や奈良県警と協議のうえ、献花台周辺を鉄柵で囲み、手荷物検査を実施した。
安倍元首相銃撃事件は、2022年7月8日午前11時半ごろに発生した。現場で取り押さえられた男(43・殺人罪など5つの罪で起訴)については、奈良地裁で争点などを絞り込む公判前整理手続きが進む。裁判員裁判で審理される予定だが、関係者によると初公判は来年以降との公算が高いという。
警察庁は事件後の検証で、当日の警護態勢の不備を認めた。そして警護の基本事項を定めた「警護要則」を改定した。それまでは都道府県警察が担っていた警護計画の策定を事前に審査する形式に改めるなど、要人警護の体制を大幅に見直した。
また2023年4月には、和歌山市で衆議院補欠選挙の応援演説をしていた岸田文雄首相に向けて爆発物が投げ込まれた。警察庁は主催する政党や陣営に対し、▼屋内会場での開催▼聴衆との接触回避▼手荷物検査・金属探知機の導入を呼び掛けた。