ひとりの男性が、大船鉾のスケッチをうちわにしたためている。河田マサヒロさん(36)。4歳からニューヨーク近郊で暮らした河田さん、はじめは海外生活になじめず、自宅にこもって絵を描くことに夢中になった。そうして笑顔を取り戻し、10歳で帰国。本格的に日本画を学び、京都の伝統行事を描いている。
「祇園祭の山や鉾はすべて魅力的だが、大船鉾は迫力が違う。特に龍頭の力強さは格別」と話す河田さんは、引きこもりなど、社会的不安のある若者たちのアートを通して、自立をサポートしている。
この龍頭を制作した彫刻師の森哲荘(てっそう)さんは今年3月、他界した。河田さんは絵画でその遺志を引き継ぐ。
「これは、一夜だけのお祭りですか?」スペイン・マドリードから京都を旅する夫婦は、日本の“縁日”か“夜市”と思っていたようだ。しかし、祇園祭は1か月続く神事。宵山はその一部に過ぎないことを知らされ驚いた。
「灯りが美しいので、引き寄せられた。単なるライトアップではなく、絵画の世界だ。日本の祭がそんなに奥深いとは」と話した。
24日の山鉾巡行は午前9時半に京都市の中心部・烏丸御池(同市中京区)を出発し、子どもたちや祇園の芸舞妓らが練り歩く華やかな花傘巡行もある。