2023年12月、兵庫県尼崎市のコンビニエンスストアで、売上金などを盗んだとして、窃盗容疑で誤認逮捕された元パート従業員の女性(60代)が、兵庫県警の違法な捜査や店側の確認不足などで損害を受けたとして、国と兵庫県、コンビニの運営会社に計330万円の損害賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論が8日、神戸地裁で開かれた。
被告の国や兵庫県、コンビニ運営会社はいずれも、訴えを棄却するよう求めた。その上で、▼国は認否について保留▼県は責任については認め、損害額について争う▼運営会社は責任と損害額について争うとした。
訴状などによると、2023年11月30日、このコンビニの店長から「従業員が店の金を盗んだ。防犯カメラにも映っているが、盗んだ従業員が犯行を認めない」と、兵庫県警・尼崎南署へ通報した。その際、店側は現金数十万円が盗まれたとする被害を届け出た。尼崎南署は女性を任意同行し、同日午後4時30分から聴取(任意)を始め、女性は一貫して「盗んでいない」と犯行を否認していたが、翌12月1日午前2時に逮捕された。
後に窃盗被害の事実がなかったことがわかり、尼崎南署は女性を逮捕から約14時間30分後の12月1日午後4時40分に釈放、謝罪した。
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女性はこの日の意見陳述で、「『自分が盗ったと吐け』と、狭い取調室で何人もの警察官から言われた。誤認逮捕から約8カ月が経つが、いまだに私の頭の中から消えることはない。なぜ、自分だけこのような仕打ちを受けなければならないのか、誤認逮捕による呪縛から今も抜け出せない」声を震わせて訴えた。
そして、「私は警察官に、『盗っていません』と何度も言い続けたが、聞き入れてもらえなかった。逃げ出せるのであれば、いっそのこと『自分が盗った』と嘘をつけば楽になれるかもしれない。けれども、盗っていないものを盗ったと言うことはできない」などと心情を語った。
さらに、「私は何年もの間、身を粉にして(コンビニを運営する)被告会社で働いてきた。従業員が少ないため、休みを返上して出勤したり、ワンオペで働くことも多くあった。それでも被告会社に貢献したいという思いから、日々の仕事を精一杯行ってきた。にもかかわらず、被告会社に窃盗犯人と疑われて通報され、『誤認逮捕でした』と言われた時の悔しさ、苦しさ、憤り、様々な感情が入り混じったあの時の感情は、今でも言葉で言い表せない。私は、誤認逮捕に関与した被告会社、警察官と、(逮捕状発布を認めた)裁判官が、ほんのわずかな注意を払っていれば、誤認逮捕の発生を避けることができたはずだ」と結んだ。