神戸文化ホール(神戸市)が開館50周年記念事業の1つとして12月に上演するオペラ「ファルスタッフ」の制作発表会見がこのほど開かれ、公演でタクトを執る佐藤正浩・神戸市混声合唱団音楽監督や演出家、主要キャストらが意気込みなどを述べた。
同ホールは1973年にオープン。昨年が50周年にあたり、3年にわたる記念事業を展開中で、「ファルスタッフ」は目玉公演となる。オペラ上演は、同ホールを活動拠点とする神戸市室内管弦楽団と神戸市混声合唱団が連携し、企画、稽古、本番までの全スケジュールを神戸で進めていく一大プロジェクトだ。今月23日からチケットが発売される。
主演のファルスタッフ役にバリトンの黒田博、フェントン役にテノールの小堀勇介、バルドルフォ役にテノールの福西仁を迎える一方、演出は神戸市出身の岩田達宗が手掛け、アリーチェ役のソプラノ老田裕子とクイックリー夫人役のメゾソプラノ福原寿美枝は神戸市混声合唱団の元団員、そのほかの一部主要キャスト、合唱は同合唱団の現役団員が担う、神戸色の濃いメンバー構成となっている。
会見で黒田は、ファルスタッフ役について「太っていて、たぶんくさい。近くにいたら近寄りたくないような男性。でも歌詞にあるように若い頃はほっそりしていていい男だった。黒田博もそうだった」と茶目っ気たっぷりに説明。その上で「年齢を重ねるとともに澱(おり)のようなものがたまっていき、男としての哲学が詰まっていく。作品全体を通して見ると、ただの喜劇ではなく、ファルスタッフの悲しさ、苦しさもある。そういうものまで舞台で演じることができれば幸せ」と、意欲をにじませた。
老田は、生まれも育ちも神戸市。神戸文化ホールはもっとも身近な劇場で、初めてのオペラ鑑賞も同ホールだったという。「大人になってからも神戸市混声合唱団に十数年在籍し、神戸に育ててもらったという思いがある。今回は、恩返しするような気持ちで参加しています」と、感慨深げな口調で話した。
佐藤音楽監督は、「ホール(神戸文化ホール)、オケ(神戸市室内管弦楽団)、合唱(神戸市混声合唱団)と、すべてそろっている。オペラをやろうとなるのは必然」とし、「アンサンブルオペラなので、よく知っている仲間同士が家族的に楽しくやることが力になる。いい音楽を作っていきたい」と笑顔を見せた。
演出を担当する岩田は、同作を「イタリア古典喜劇を基にした、世界の文化の集大成」と位置付けて、「女性が男性の権力者を『やっつけて』、みんなで仲良くしようという話。神戸から、人類全体が対立を乗り越えて、平和になるよう発信できたら」と、意気込みを語った。