映画公開を経て改めて、「放送の役割、アナウンサーの役割はどうあるべきか」と尋ねられた一木さんは、「放送は、アナウンサーや情報を伝達する人たちが一方的に何かを伝えるのではなく、人の話を聞き、声を出せない人の声を聞くこと(が必要)」とひと言。
そのうえで、「和田信賢さんが、放送を聞いている人々が知ることのできない、戦争で亡くなった人たちの遺族の声や、自ら発信できない人々の声を集め、代弁者、媒介者となって発信したことこそが放送の役割であり、やらなくちゃいけないことなのではないか。『マイクを自分のものではなく、みんなのものに』ということだと思います」と付け足しました。
作品を通して、「大人が起こした戦争で実際に命を落としているのは子どもたちである、というあってはならない事実を、いまこういう時代だからこそもう一度追体験してほしい」と願う一木さん。
「決して戦争が好きなわけではまったくなく、普通の人間たちや学校の先生、メディアまでもが、結果として戦争に関わらなければいけなかった悔しさ、悲しさ、怒りというものを追体験していただきたいなと思います」と熱く語りました。
「ラストシーンにある子どものひと言。その言葉をぜひとも劇場で見ていただきたい」と言葉を強めた清水アナ。
その真意については、「『言葉で人の心に残る瞬間をつくりたい』。そう思って僕はアナウンサーを目指し、いまでもそんなアナウンサーになりたいと思っています。ラストシーンにあるひと言は、僕の目指しているアナウンサーの形で、でも、だからこそ、言葉のこわさ・伝える責任を深く考えました」と述べました。
映画『アナウンサーたちの戦争』は、兵庫では現在、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸で公開中です(※上映終了日未定)。
◆一木正恵
NHK大阪放送局チーフディレクター。朝ドラ、大河ドラマ演出作多数。朝ドラ「ゲゲゲの女房」でドラマアカデミー賞最優秀作品賞、ギャラクシー賞、「おかえりモネ」でギャラクシー賞奨励賞。大河ドラマ「八重の桜」で国際エミー賞ファイナリスト、 「いだてん~東京オリムピック噺」で東京ドラマアウオードグランプリ。また 閉鎖された福島県浪江町で撮影を敢行した「LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと」でプロデューサーとしてドラマを映画化、劇場公開した。
※ラジオ関西『Clip』木曜日より